内容説明
美貌の姉の陰に隠れ、子供の時から不幸を噛みしめて育ったベットは、たった一つの宝物を今度は姪に奪われ、巧妙な復讐劇を考えだした。男爵の新しい愛人と手を組み、富豪のクルヴェルを引入れ…。放蕩に身を亡ぼす男爵、あくまで外観にこだわる夫人、成上がり、娼婦。貴族を笑いものにしながら、愛と権力を追い求める男女の大騒ぎを描く『人間喜劇』中で、質量ともに屈指を誇る長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アリョーシャ
5
下巻では、性、金、復讐への醜悪なまでの欲望が、暴威を振るう。読みながら、醜悪な描写に目を背けたくなりながらも、一気に読み切ってしまった。バルザックは、欲望が理性を圧倒する(彼の言葉を用いるなら《悪徳》が《天使》に打ちかつ)人物を描くのだろうか。この部分は、『「絶対」の探求』や『ゴリオ爺さん』にもはっきりと描かれている。むかつきながら(しかし一気に)読んだので、しばらくバルザックからは離れたい。だが、また読んでしまうのだろうとも、思う。2017/05/31
モリータ
4
マノン・レスコーがかわいく思える悪女・マルネフ夫人に、じじいになって身ぐるみはがされてもだらしねぇユロ男爵。正義は勝つ…と思いきや、じいさんの悪癖だけは最後まで止まらんのがいいよね。2012/07/08
susu
3
ただただ面白い。放蕩者のユロ男爵、崇高なアドリーヌ、狡猾なマルネフ夫人、金にものをいわせるクルヴェフ、高潔なフォルゼム伯爵、それらの人々の背後で画策するリズベット。パリの社交界から路地の貧民窟まで、幅広い舞台で様々な人物が登場するが、誰もが生き生きと魅力的だ。愛と嫉妬、二つの反しながらも相通ずる感情をもとに描かれた「人間喜劇」。2009/06/18
Yoko Kakutani 角谷洋子/K
2
女性の登場人物の描き方が記号的で深い掘り下げがないように感じた。主役の従妹ベットすらどこか影が薄く、ユロ男爵の恐るべき妄執ばかりが印象に残った。怠惰ゆえに優れた芸術家になりそこねるスタインボック、といい総じてダメ男列伝といったおもむき。2020/06/20
zoros
2
『悪魔の酷薄が天使の忍耐を打ち負かしたのだ』 ユロ男爵の徹底ぶりは神々しいまでだ。 リズペットの嫉妬がはらせないままだったのは、そこに少しは天使の勝利があったのかもしれない。 『人間喜劇』とはよくいったもの。2018/04/11
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