感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
395
小説は極めて緊迫した場面のうちに始まる。午前0時。陳が武器商人の殺害を決行しつつある、まさにその時間である。我々読者は、その光景を見る作家の視点に同化される。あるいは時には陳自身の視点に。テロリストの陳、共産党員の清、カトフ彼らは3様の過去を持ち思想も違うのだが、それぞれが内なる孤独を抱えている点、そしてニヒリズムの影を背負う点において共通する。蒋介石の国民党、なにか今一つ実態の定かでない共産党、そしてコミンテルン。彼らはそれらの狭間で生き、そして死んでいく。ジゾールとメイによる幕の閉じ方も余韻が深い。2020/09/19
遥かなる想い
163
中国上海の4・12クーデター前後の事件を 背景にした作品である。 中国の国共対立の様をフランス作家マルローが 描く。東洋独特のの過剰な湿度感がないのが、 新鮮な気もするが… 蒋介石の覇権掌握と抵抗して死んでいく コムミストたち…最後の選択の潔さと 随所に窺われるフランス視点が 特徴的な 作品だった。2018/09/24
ケイ
144
再読。読むのは4度目。初めてよんだ20代の時には、マルローの持つオリエンタリズム、特に日本への感傷の本質を知りたくて仕方なかった。自らの年齢が上がるにつれて、死について分かったようなことを書くなと読み方がすれてきたが、今回はこれを書いた若者だったマルロー自身の若気の至りのようなものをむしろ温かい目でみている自分がある。当時の共産主義的革命の精神、その為に命を犠牲にするための意義付け。武士道への畏敬。これが書かれてから三十数年経ってからの三島の自死。表紙には、書いた頃のマルローの顔が欲しい。2018/02/02
まふ
109
数十年前以来の再読。1927年に起こった「上海クーデター」の発生から失敗に至るまでを主として中国人以外の関係者を中心に描いた物語。「中国人ではない中国共産党員」が中心となって活動するのが初読の時からしっくりこなかったが、今回もピンと来ないままに読了した。いわば、「流れ者のプロ革命仕掛人のような連中を中心人物に仕立て上げたクーデター」のような気がしてならない。よって、これを「歴史をベースとした小説」とはせず、「ファンタジー」と位置付けることで、我がもやもや感を収めることとした。 G576/1000。2024/07/27
扉のこちら側
84
2017年120冊め。【275/G1000】1927年の敗北した、しかしこの上なく生き生きした革命の描写。なぜ労働者や農民は革命に負け、蒋介石の反革命クーデターを許してしまったのか。読んでいる最中はそう思わなかったのに、読了してみるとこのタイトル程ふさわしいものはないよに感じてくる。(続)。 2017/02/05