内容説明
女たらし、酒好き、ナチス党員、そしてソ連東京諜報網のトップ、コードネームは「ラムゼー」…。二・二六事件、日独防共協定、ノモンハン事件等の最高機密文書を入手し、精確な情勢分析をモスクワに送り続けたスパイの素顔とは?アグネス・スメドレー、尾崎秀実らゾルゲ人脈の全貌を明らかにし、独大使館を手玉に取って、危険なタイトロープを渡る男の絶望と苦悩に迫る。
著者等紹介
ワイマント,ロバート[ワイマント,ロバート][Whymant,Robert]
1952年英国生れ。ケンブリッジ大学卒業。英「ガーディアン」「デイリーテレグラフ」紙特派員を経て、現在、「ザ・タイムズ」記者。今にいたるまで20年あまり、ゾルゲ研究に専心。他の著述とともに、日本についての報道を続けている
西木正明[ニシキマサアキ]
作家。1940年秋田生れ。’80年「オホーツク諜報船」で日本ノンフィクション賞新人賞受賞。’88年には「凍れる瞳」「端島の女」で直木賞受賞。’95年『夢幻の山旅』で新田次郎文学賞、2000年『夢顔さんによろしく』で柴田錬三郎賞を受賞した
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感想・レビュー
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harass
26
ソ連で英雄とされるゾルゲの生涯を描くノンフィクション。非常に有名な人物であるが自分はちゃんとした彼の本を読むのは初めてだ。上巻はナチスドイツのロシア侵攻作戦の開始日をロシアに連絡するところで終わる。極度に外国人に厳しい日本を舞台にドイツ大使館と日本人協力者に取り入ってソ連諜報部のための情報を整理収集するのはなんという極限状態なのだろうか。難しい仕事を長年に渡って過ごしてきた人間力に感嘆する。またソ連内部の粛清騒動にも巧みに立ちまわるのはさすがだ。世界大戦直前の日本の描写もあり実に面白い。2014/08/16
井上裕紀男
17
二度の世界大戦の最中、疲弊し続ける日本は外国人スパイに目を光らせていたが、凄腕のゾルゲ氏は次々と情報をモスクワへ送り続けている。 真の話かと思わせるような各国のスパイと繋がっていくゾルゲの卓越した力と彼を助ける女性たち、緊迫する国際情勢は彼等をきっと酷使していったのだと思わせます。 前半生も取材されており、いかにしてスパイとなり何故皆を凋落し得たのかも興味深い。各章の注釈にも情報が詰まっている。 2021/08/21
シャル
7
伝説のスパイとも言われる、リヒャルド・ゾルゲの活動とその人間性についての分析。上巻はバルバロッサ直前まで。スパイらしいどこにでも入っていく親しみやすさや情報の扱いの有能さと、彼自身が持つ制御しきれない衝動のギャップが描かれる。その一方で、そんなゾルゲ自身の綱渡りの日常の裏で動く不穏な東と西、そしてソ連の動向というスケールの大きさが、戦前の不穏で息苦しい空気とともに、彼の活動の重要さを知らしめる。スパイの活動の重要さと同時に、そんな巨大な任務を二重生活の中で進めていくことの重圧が目に見えるようで興味深い。2013/12/09
若黎
6
図書館本。 2024.1.8 追記 積読山の底から発掘。ナイと思って図書館で借りて読んだけど、持ってたことが判明したのでメモ2023/06/26
ゆずこまめ
5
エキセントリックなゾルゲ、すごい目立ちそうだけど大丈夫?エキセントリックだからスパイになったのか、諜報活動の重圧と孤独に耐えかねてエキセントリックになったのか、どっちだろう。難しい時代でもあるし、現実のスパイは大変だなぁとしみじみしながら下巻へ。2015/07/16