内容説明
ゆうべ、またマンダレーに行った夢を見た―この文学史に残る神秘的な一文で始まる、ゴシックロマンの金字塔、待望の新訳。海難事故で妻を亡くした貴族のマキシムに出会い、後妻に迎えられたわたし。だが彼の優雅な邸宅マンダレーには、美貌の先妻レベッカの存在感が色濃く遺されていた。彼女を慕う家政婦頭には敵意の視線を向けられ、わたしは不安と嫉妬に苛まれるようになり…。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
413
読む前は、主人公レベッカは深紅の薔薇のような情熱的な女で、彼女の奔放な恋の物語が語られるものだとばかり思っていた。ところが、物語の語り手の「わたし」は、それとは正反対の地味で控えめな(よく言うならば、清楚なのだが)存在だった。彼女の一人称回想体で語り始められるが、我々読者は、冒頭からすぐさまこのミステリアスな物語世界に投入することになる。そこには存在しないはずのレベッカが、マンダレーを支配するという構図も実に劇的であり、魅力的だ。読者は「わたし」の視点から見るだけに、もうすっかり小説世界の渦中にいるのだ。2016/01/20
Kircheis
359
★★★☆☆ ゴシックロマンの古典。 才色兼備の先妻レベッカの存在感により、不安と嫉妬に苛まれるヒロインの苦悩を描いた物語。仮装舞踏会でレベッカが生前に行ったのと同じ仮装をしてしまい、マキシムに怒鳴られて泣きながら部屋に逃げ帰るヒロインとそれを嘲笑うダンヴァース夫人の姿を描いたシーンで上巻は終了。 ヒロインの内気すぎる性格にイライラしてしまってあまり応援できなかった。マキシムもレベッカに関することでヒロインに八つ当たりしている場面が多く、どうも好きになれない。下巻にはもっと面白くなる予感はするのだが…2023/03/18
青蓮
114
海難事故で妻を亡くした貴族のマキシムと出会い、後妻に迎えられた「わたし」。だが優雅な邸宅マンダレーには美貌の先妻レベッカの存在感が色濃く遺されていたーー幸せなシンデレラストーリーかと思えば、そうではなく、寧ろ先妻のレベッカが彼女に亡霊のように付き纏い、それが重圧となってのしかかる様は可哀想なくらい。しかも彼女は内気であまり社交的でない性格であるから余計に辛そう。家政婦長からは敵意を向けられ、訳が分からないうちに落とし穴へと突き落とされ、散々な目に。このあと彼女の運命はどうなるのか。下巻へ続く。2018/01/30
(C17H26O4)
108
朝の通勤電車で読んでいてあやうく乗り過ごすところでした。続きを一気に読みたくて、帰りは電車を途中下車し、喫茶店に寄って上巻最後まで。気分はすっかり世間知らずな娘の「わたし」。マキシムがしたみたいにされたら、きっと即おちてしまう。が…夫マキシム、前妻レベッカ、マンダレーのお屋敷に関するさまざまな違和感や謎が「わたし」の思考や妄想とともにどんどん膨らんでいきます。家政婦頭のダンヴァーズさんこわい。「わたし」がマキシムに一度も名前で呼ばれていないことも気になります。新婚なのに。下巻へ急げ(もう読んでるけど)。2019/12/19
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
107
『シンデレラのその後』を描いたラブサスペンス。旅先で出会った年上の貴族と電撃結婚した『わたし』。彼は妻をヨット事故で喪い傷心旅行の途中だった。ハネムーンを終えたわたしは、彼の美しい邸宅マンダレーに魅了される。しかしそこには先妻レベッカの薫りが強烈に遺っていた……。〈ゆうべ、またマンダレーに行った夢を見た。〉のフレーズで始まるゴシックロマンの傑作。物語は静かに進行し、全編で暗く不穏な旋律が奏でられる。レベッカに仕えた家政婦頭の悪意と嘲りの描写が恐ろしい。そして、花嫁のお披露目を兼ねた仮装舞踏会で……。2016/01/10