内容説明
「ほんの一瞬、生きてるからよ。だから面白え」江戸の職人たちの生の輝きを哀歓をこめて紡ぎだした名品。
著者等紹介
佐江衆一[サエシュウイチ]
1934(昭和9)年、東京生れ。コピーライターを経て’60年、短編「背」が新潮社同人雑誌賞を受け作家デビュー。「繭」「すばらしい空」などで5度芥川賞候補となり注目された。’90(平成2)年『北の海明け』で新田次郎文学賞、’95年『黄落』でドゥ・マゴ文学賞、’96年『江戸職人綺譚』で中山義秀文学賞を受賞
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感想・レビュー
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mocha
98
今作は庖丁人、道具鍛冶、からくり師、団扇師、銀師、花火師、張型師、根付師の8篇。技を究めようとする職人たちの熱や誇り、焦り、そして狂気が溢れている。己の道を一心不乱に突き進む職人に羨望を覚える武士や、寄り添うことでその道の先を見たいと願う女達のドラマでもある。「自鳴琴からくり人形」の妖しい雰囲気が好きだった。2017/04/17
蛇の婿
9
表紙はからくり師・庄助…この庄助が活躍する『自鳴琴からくり人形』と、『亀に乗る』『装腰奇譚』の3篇が大好きです。昔、飛騨高山に観光したさい、たまたま『飛騨の匠』のさまざまな工芸品を見る機会がありましたが、思うに、時代がたとえ変わっても、こういった職人魂とそれにまつわるドラマは今でもきっと続いているのではないでしょうか。巻末の、細谷正充さんの解説も素晴らしい。2012/08/19
タツ フカガワ
8
庖丁人(板前)・道具鍛冶・からくり師・団扇師・銀師・花火師・張型師・根付師の、いわゆる職人気質と彼らが抱える苦悩と哀しみなどに材をとった前作に劣らぬ粒ぞろいの短編集。それぞれの仕事の、それも指先までを目前に見るようで、すぐに物語に惹きこまれました。といっても趣向や語り口はさまざまで、「一椀の汁」「江戸鍛治注文帳」では思わず落涙。また結末を読み手に委ねたような「装腰奇譚」は名作ですね。実在の根付師月虫をモデルにした一編で、読後、インターネットでその作品を見ながら余韻に浸りました。2018/08/13
kazukitti
4
再読。職人の生き様、こういわゆる「職人気質」ってのは、武士道とか騎士道みたいな虚構性の高いものではないんだろうけど、やっぱりある程度はテンプレ的な部分もあるような気はする。ただまぁ昭和以前の男の姿勢とかも考えるとある程度は真実だったというのは想像の範囲内で、その延長線上での話なのかな。ある種の理想の投影というか。2018/06/23
hazama
3
「自鳴琴からくり人形」も好みの題材だが、「江戸鍛冶注文帳」が職人色が強くて好きだ。全体にもう一寸迫力が欲しかった。著者近影は必見(笑)。2011/01/03