• ポイントキャンペーン

新潮文庫
謎の母

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 264p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784101456270
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0197

内容説明

いつでも女の人に甘え、その場をずるく言い逃れ、迷惑という迷惑をかけ通しだった。でも実は、身をよじるようにして、この国と、国民のことを案じていた。十五歳の「私」を見つめる時、まぎれもなく、母にすがる目をしていた。玉川上水に女と身を投げたあの人は…。一人の女生徒が物語る、優しくて汚くて、誇り高くて品がなくて、「無頼派の旗手」と呼ばれた小説家の「死」まで。

著者等紹介

久世光彦[クゼテルヒコ]
1935(昭和10)年東京生れ。TBSを経てテレビ番組制作会社を設立、ドラマの演出を手がける。’92(平成4)年『女正月』の演出により芸術選奨文部大臣賞受賞。’93年『蝶とヒットラー』でBunkamuraドゥマゴ文学賞、’94年『一九三四年冬―乱歩』で山本周五郎賞、’97年『聖なる春』で芸術選奨文部大臣賞を受賞。’98年紫綬褒章受章
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

メタボン

33
☆☆☆☆☆ 15才のさくらの文章は、さくらの声でいつまでも聞きいっていたいと思われる名文。このあたりは名シナリオライターであった久世光彦の得意とするところなのだろう。さくらよりも年下なのに、むしろ大人らしい振る舞いをする弟鮎郎、はかない存在のサチ子(のちに玉川上水で朽木と心中する)、家族を捨てて男と上海に渡ったが落ちぶれて戻ってくる母、そして情けなくも魅力的な作家の朽木(太宰治がモデルなのは明らか)。人物造形が巧みである。2023/08/22

tomo*tin

21
少女という形の無い概念が、言葉という形の無い曖昧なもので綴られてゆく。碌でもない駄目男の母であろうとする十五歳の少女。その心の在り様が色とりどりに散らばって見えた。気高く純粋でありたいと願う精神。それに相反して、堕ちてゆく己を意識の斜め上から蔑む自己。誰にでも犯すことの許されぬ聖域がある。そして、誰もが誰かの聖域になりたいと願っている。その擦れ違いが痛ましくも美しく、頽廃に包まれて描かれていたと思う。そこには確かに太宰の姿が透けて見え、なぜか少し切なくなった。2009/10/06

やまちゃん

6
多感な女学生・さくらから、朽木との想い出をそっと打ち明けられている気持ちになり、ずっとドキドキしていました。告白体の切ない語り口に、うんうん!朽木さんって、酷いよね~(T^T)と相槌を打ち、時には、そんな事絶対止めたほうがいいって!と忠告したり(笑)、ほらやっぱり嘘だったでしょう…と、一緒に泣いたり。太宰へのオマージュとして、こんなに想像力を掻き立てる物語を創ってしまう久世氏の筆力たるや!! 聖母とキリストのピエタが所々で抜群のアクセントになっていて、あっけない死に、不思議とふさわしかったです。2014/08/18

山吹

5
いい年した男が書いた文なのに、女の子一人称に全く違和感がない。太宰とある女学生の物語。時代の空気を感じ、すっきりしないじめじめ感。

九鳥

4
今度は太宰。こういう物語を生き生きと描く久世さんが好き。2005/04/01

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/42467
  • ご注意事項

最近チェックした商品