内容説明
パタゴニアの烈風の下、晴れすぎるぐらいの空を眺めていたら、ふと空がとても悲しく見えてきた。そうか、時として青空は悲しいものなのだと気づいたとたん、青空の風景がガチャリと音をたてて進化したような気がした―。いつか見た風景や、まだ見ぬ風景が心の中で重なりあって、全く新しい風景が生まれてくるような瞬間をとらえたエッセイ集。著者自身による写真も多数収録。
目次
どははは列車
銅砲坂のオドロキ男
愛と闘魂の安全三角地帯
三段跳び納屋君からの小包
とおりすぎる人々
沈黙電話が鳴っている
二枚ガラスの向こう側
さすらいの汲み取り便所
三匹の蛾と浜口ユウジ君
待っている女〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sabosashi
20
この著者もいろいろ綴ってて、たかが数冊しか知らないようなわたしがあれこれとまとめ上げようとするのはあまりにもアンフェアではないかと怖れる。しかしプチブル文化の剰余物でしかないような気がする(黴の生えてきそうな言い草だが)。ここは猥雑な話で充ち、もちろん全否定しようなんて魂胆があるわけではない。ある種のガッツ、および優雅な気まぐれさがうまく混ざり合っているという印象か。これも一つひとつの章にコメントしていくときっと愉しくなるのだろうとは思うのだが。ある種の雰囲気のようなものを知るための読み物か。2025/03/03
たーくん
4
パタゴニアの烈風の下、晴れすぎるぐらいの空を眺めていたら、ふと空がとても悲しく見えてきた。そうか、時として青空は悲しいものなのだと気づいたとたん、青空の風景がガチャリと音をたてて進化したような気がした―。いつか見た風景や、まだ見ぬ風景が心の中で重なりあって、全く新しい風景が生まれてくるような瞬間をとらえたエッセイ集。著者自身による写真も多数収録。 2017/07/10
東森久利斗
2
昭和のアナログな時代を代表する名雑誌「写楽」連載でこそ生きるエッセイと写真。文庫本では伝わらない、納まりきれない、「写楽」でしか伝わらない何か。椎名節炸裂、痛快な語り口のある日の風景、怒涛のエッセイ。物語風、ホラー、SFテイストな風景。進化なんて無縁、椎名風鉄板な心象風景のオンパレード。コーヒーと躁鬱のエピソード、アウトプットからは思いもよらない、心労の日々に胸を打たれる。「沈黙電話が鳴っている」がベスト。2022/09/26
Mingus
2
写真雑誌に連載された風景についての椎名氏の語られること。風景が進化するというより、風景が発展し、派生し、展開されていくような感覚を覚える。私はいつも椎名氏の鮮明な記憶力に舌を巻くのだが、ある一つの事柄が、ある一つの記憶を引っ張り出し、そこからまた繋がっていく、とりとめもない事柄。そこは風景から情景になることもあれば、これって風景なのか?という半ばこじつけ感も否めない話など(それはそれで味わいがあるのだが)とにかく自由で、肩の力を抜いて楽しめる。椎名氏がコーヒーを飲むようになったのはこの頃からと知り意外だ笑2017/05/06
owlman
2
なんでもなく、むしろしょうもない話がずらずらと並んでいるが、これほど日常らしい日常もない。平和でとてもいい。2013/09/16