出版社内容情報
腹に水がたまって妊婦のように膨らみ、やがて動けなくなって死に至る――古来より日本各地で発生した「謎の病」。原因も治療法も分からず、その地に嫁ぐときは「棺桶を背負って行け」といわれるほどだった。この病を克服するため医師たちが立ち上がる。そして未知の寄生虫が原因ではないかと疑われ始め……。のちに「日本住血吸虫症」と呼ばれる病との闘いを記録した傑作ノンフィクション。
内容説明
腹に水がたまって妊婦のように膨らみ、やがて動けなくなって死に至る―古来より日本各地で発生した「謎の病」。原因も治療法も分からず、その地に嫁ぐときは「棺桶を背負って行け」といわれるほどだった。この病を克服するため医師たちが立ち上がる。そして未知の寄生虫が原因ではないかと疑われ始め…。のちに「日本住血吸虫症」と呼ばれる病との闘いを記録した傑作ノンフィクション。
目次
第1章 死体解剖御願
第2章 猫の名は“姫”
第3章 長靴を履いた牛
第4章 病院列車
第5章 毛沢東の詩
第6章 果てしなき謎
著者等紹介
小林照幸[コバヤシテルユキ]
1968(昭和43)年、長野県生れ。ノンフィクション作家。’92(平成4)年に『毒蛇』で第1回開高健賞奨励賞、’99年に『朱鷺の遺言』で第30回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。信州大学卒。明治薬科大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ねこ
162
別紙「おすすめ文庫王国2025」で1番読みたくなった本!明治14年〜明治21年頃から続いている寄生虫と人類との闘い。山梨の地方病、広島の片山病、佐賀の奇病、福岡のマンプクリン。これらは「日本住血吸虫症」であった。中間宿主のミヤイリガイから経皮感染(農民が水田に入り足から感染)し発症する。患者は腹が大きく膨れ「水腫脹満」になる。また子どもが感染すると発達障害を起こし20歳過ぎても小学生低学年程の体格と知能のまま。そして死に至る病であった。それを100年余りかけ多くの人々の力により克服した記録。素晴らしい。 2025/02/26
kinkin
136
山梨県や広島、福岡などの一部に奇病。それによって多くの死者が出ているこ原因を解明してゆく医師や大学教授、住民たちの物語。日本住血吸虫という言葉はなんとなく聞いたことがあったので興味深く読むことができた。原因が日本住血吸虫にあったが中間寄生主がなになのか長らく分からなかった。様々な仮定や実験を通してミヤイリガイという巻き貝ということから奇病は様々な対策を通して解決してゆくところがドラマ性があってよかった。現代もアフリカやアジアの奥地には未知の細菌やウィルスがあると思う。そうしたパンデミックがないことを願う。2024/08/09
fwhd8325
126
公害病などは、子どもの頃に見聞きしてきたが、この病気は全く知りませんでした。やはりノンフィクションは、すごい。そして面白い。きっと今も、私たちの知らないところで研究を重ねている方がいるのだろう。感謝と敬意で一杯です。2024/07/10
六点
105
某所で目にした『ウィキペディア三大文学』の惹句にひかれて購入。『羆嵐』と『八甲田山死の彷徨』は既読なので、今回はパス。つい最近ローカルニュースで、裸足で田んぼに入り素手で田植えをするというニュースを見たが、この本を読むとなんと危険な事をさせているのかと慄然とした。読書により世界の見え方が変わる好例である。あんまり嬉しくないけどな。2024/06/19
どんぐり
100
日本住血吸虫症という風土病との長い闘いを描いたノンフィクション。1904年、山梨の地方病として発見された腹部が膨満した異常な体形をした人々が、寄生虫病によるものと確定し、広島、佐賀、福岡の地方病も同様に日本住血吸虫症であると『官報』に発表された。病原体の特定、中間宿主であるミヤイリガイの発見、そして殺貝剤の開発や農地改良による対策まで、科学者、行政、地域住民が一丸となって病気の根絶に挑んだ過程が克明に記されている。特に病気の正体が明らかになるまでの試行錯誤、ミヤイリガイの根絶に向けた努力は注目に値する。→2025/09/01