内容説明
夫婦と、息子ひとりの3人家族。どこにでもある、新興住宅地の平穏で幸福な一家だった。妻が妊娠したことで、新たなる喜びに一家は包まれる…はずだった。しかし、ある朝、夫が巻き込まれた小さな事件が思いもよらぬ展開を見せ、彼らの運命を大きく狂わせていく―。次第に追い詰められ、崩壊に向かう家族に、果して救いはあるのか?現代の不安を鋭くえぐった心理サスペンス。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
🐾Yoko Omoto🐾
120
通勤電車で痴漢の濡れ衣を着せられたことに端を発し、事実無根の噂で周囲からの好奇の目に晒された家族の崩壊から再生までが描かれる。事件が元で家族三人それぞれが会社や近所、そして学校で受ける理不尽な仕打ち。それを胸の内に抱えたままでいることで沸き起こる家族への不信や疑念、苛立ちなどが見事に描かれており、頁を捲る手が止まらなかった。特に息子「渉」の心の葛藤や、いじめを受けながらもプライドを持ち信念を曲げない姿には深く共感。誰にも胸の内を吐露できる相手は必要であり、それが家族であれば言うことはない。いい作品だった。2014/07/28
じいじ
92
父子二人暮らしの父親が再婚。円満家庭の絆が、或る朝の出来事で突如として崩れ出す、ちょっと怖い物語。父親が通勤電車で、身に覚えのない痴漢容疑をかけられしまいます。さらに後日50万円の慰謝料示談金を支払う、理不尽な事件に発展。家族が壊れる話は、元来あまり好きではないが、さすが乃南さん爽やかに鮮やかにまとめてくれます。三人それぞれの視点で綴られる物語は、手に汗する緊張感が堪らなく面白いです。2021/08/02
tengen
71
絢子は子供を授かった。そんな幸せを感じた日に小さな事件は起こった。夫の崇は通勤途上、痴漢と間違われる。何もしてい無いのに、拘留取り調べを回避するなら示談金を支払うのが一番スムーズと言われ応じたが……噂と云う妖怪は尾ひれをつけて社内、近隣、学校と蔓延し、幸せだった家族をいとも簡単に崩壊させる。いがみ合いは今まで隠していた本心の暴露なのか。☆彡何時でも起こりうるぞ。怖い。タイトル恐ろしかったが、そういうことか!それにしても友樹くんリッパ。2015/04/29
ちょろこ
66
タイトルと読後感のギャップが印象的だった、一冊。とにかくドロドロ、女性の狂気満載なのかと思ったら…家族っていいな、のストーリー。ある日巻き込まれた事件が家庭崩壊のきっかけになるなんて…。明日は我が身かもしれないところがおそろしい。それぞれが、職場、学校、近所で追いつめられていく心理はまるで二時間サスペンスを観ているようだった。中でも渉の強さはいじらしかったな。言いたいこと、思っていることをその都度吐き出すのも家族であるための大切な要素なのね。2016/05/11
Take@磨穿鉄靴
64
崩壊していく家庭の過程を父、息子、継母の3つの視点から切り取った内容。これだけだとありふれた感あるけど久しぶりに途中で切り上げるのが難しいほど入り込む。「どこをどうすればこのイヤなルートを回避出来るのか」それをテーマに進む。痴漢冤罪の対応って何が正しいんだろ。電車通勤っておっかないね。片道20km以内ならみんな通勤ランすればいいのにね。ラストは…。ちょっと出来すぎ感あり。★★★☆☆2019/06/27
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- 和書
- 町医北村宗哲 角川文庫