内容説明
野人・怪人と謳われた南方熊楠の好物はアンパン。本職が牛乳屋の伊藤左千夫は丼飯に牛乳をかけてもりもり食べたそうな。人肉嗜好の金子光晴は口腔内の頬肉を食いちぎって試食したというから驚きだ。そして美食家の折口信夫は若い頃のコカイン常用で殆ど嗅覚がなかったし、アル中の極みは若山牧水だった。ああ、食は人なり。三十七文人の食癖にみる近代文学史。『文人悪食』の続編。
目次
小泉八雲―一椀に白魚の泣き声を聞く
坪内逍遙―牛鍋は不良のはじまり
二葉亭四迷―快男児、酒を飲めず
伊藤左千夫―牛乳屋茶人
南方熊楠―山奥の怪人はなにを食うか
斎藤緑雨―筆は一本、箸は二本
徳冨蘆花―一膳の赤飯
国木田独歩―牛肉か馬鈴薯か
幸徳秋水―獄中で刺身
田山花袋―うどんと蒲団〔ほか〕
著者等紹介
嵐山光三郎[アラシヤマコウザブロウ]
1942(昭和17)年、静岡県生れ。雑誌編集者を経て、作家活動に入る。’88年、『素人庖丁記』により、講談社エッセイ賞を受賞。2000(平成12)年、『芭蕉の誘惑』(後に『芭蕉紀行』と改題)により、JTB紀行文学大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯
47
『文人悪食』続編。食を通してみる作家の人となり作品論。前作よりも、アル中、薬中の作家が多かった。監獄料理を楽しむ荒畑寒村の鋼のメンタル、屑養母に育てられた室生犀星の幼少期の悲惨さ、横光利一の作品、だいぶ昔に「春は馬車に乗って」を読んだことがあったけれど、もうあまりおぼえていないので再読したいと思った。興味深い人。2016/03/12
たぬ
29
☆4.5 好きなシリーズの第2弾。37人の食癖・概略・人となり・交友関係等がどれもたいへん興味深い。寝ても覚めても食べることばかりな文人もいればそうでもない文人もいて個性が実に豊か。酒でやらかす者が多いのは想定内だったけど留学先のアメリカで泥酔して全裸→即放校の南方熊楠、絡み酒お山の大将で皆から嫌われていた鈴木三重吉、方々から金を恐喝しまくっていた平林たい子などクズエピソードがやはり印象に残る。2021/03/09
fseigojp
25
文人悪食の続編 伊藤左千夫の、なんでも牛乳は、少しわかる気がする。クラムチャウダー粥をつくり、牛乳で割るといいんですよねえ。2015/10/26
双海(ふたみ)
18
非常に愉快な本だった。文庫本ながら577頁もある。南方熊楠、佐藤春夫、小泉八雲の章がとくに好きだ。2018/11/22
剛腕伝説
17
食は人なり。文人の食癖を通し近代文学の裏側に迫る一冊。【文人悪食】同様、骨太な文章。『南方熊楠』の項が強烈。 熊楠は大学予備門で漱石と同級生だった。漱石同様ロンドンに留学したが、漱石と入れ替わるように帰国している。ロンドンで生活した漱石が神経最弱になり、発狂寸前まで追い詰められたのに対し、熊楠はロンドンで逞しく生き抜いた。ネイチャーへの寄稿は多数に及び名声を得た。癇癪持ちで、勤めていた博物館で東洋人を馬鹿にする白人を殴打し追放される。米国では酔って全裸で暴れ、放校となる。快男子である。小気味が良い。2023/11/23