内容説明
明治政府に反逆し、賊として処刑された者たちが、維新前夜の功績を評価されて次々と贈位されていく中で、奇兵隊三代目総管・赤根武人の名誉がついに回復されなかったのはなぜか。現代の法廷に、山県有朋、伊藤博文らを次々に冥界から証人として喚問し、著者の分身たる弁護人が維新史の暗部に横たわる謎をえぐりだす表題作をはじめ、明治維新前後に材をとった力作3編を収録する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
高橋 橘苑
11
明治維新前後の短編3作。表題作の「狂雲我を過ぐ」は赤根武人を扱った作品だが、個人的には他の2作を推したい。「三条河原町の遭遇」は、池田屋騒動で火花を散らした、沖田総司と吉田稔麿という若者を描いた作品。激動期に迷いながらも精一杯生きた彼等に、筆者がもった哀惜の情を想う。「秋霜の隼人」は大久保利通が主人公の作品。ある面から観ると、誰でも大久保に同情したくなるとはいえ、さすがに筆者の筆は冴えていると感じる。自分も木戸や島津久光以上に大久保は西郷に何かしらの圧迫感をうけていたのではないかと思っている。秀作である。2014/06/02
さっと
4
幕末から明治初期の時代小説集。「狂雲われを過ぐ」「三条河原町の遭遇」「秋霜の隼人」の3編収録。表題作は、「奇兵隊」の第三代総管赤根武人が主人公。奇兵隊を離れた後、幕府方に内通、裏切り者として捕えられ、一切の弁明も許されずに処刑された。名誉がついに回復されなかった真相をめぐり、架空の裁判劇が幕を開ける。「池田屋事件」で一瞬だけ交わった新選組隊士・沖田総司と長州藩士・吉田稔麿の「運命の日」までを、それぞれの視点で描いた「三条河原町の遭遇」も、構成の妙。短編ながら、クライマックスまでの高揚感がたまらない。2012/04/22
孤灯書屋
1
⭐️⭐️⭐️2024/01/19
てつ301
1
中身の濃い作品です。幕末関係の作品として お勧めです。2015/10/19