内容説明
どんな絵がいい絵か、と問われたなら、洲之内徹はこう答える。買えなければ盗んでも自分のものにしたくなるような絵、と―。「描いた者の運命」としての絵画との出会い。「運命を背負った、不思議な生き物」としての絵画との共棲…。「気まぐれ美術館」の連載が始まる前年、当代に稀なる目利きあり、と噂されていた筆者が書下ろした美術随想。飄々として語る“絵と真実”38話。
目次
赤まんま忌
画廊のエレベーター
佐藤哲三「赤帽平山氏」
海老原喜之助「ポアソニエール」
津田正周「ダンフェルロッシュロの祭り」
木村荘八「お七櫓にのぼる」
松本竣介「ニコライ堂」
野田英夫「メリー・ゴー・ラウンド」
倉敷の宿
山発さんの思い出〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
国分太一そっくりおじさん・寺
69
洲之内徹が芸術新潮に『気まぐれ美術館』を連載する前に出したエッセイ集。1枚の絵につきひとつの話といった感じのものだが、冒頭から息子さんを交通事故で失った話から始まり、身が引き締まる思い。余談になるが、このエッセイを読むと、所々で無免許運転( 亡くなった息子さんも無免許の事故)や飲酒運転、立ち小便や車の窓からゴミを投げ捨てる話が出てきていかにも昭和らしい。今ならば書けば炎上する事柄ばかり。平成は日本人のモラルが向上した時代だったと痛感。そんな昭和らしさをタイムスリップのように感じながら絵画の世界を垣間見る。2018/11/09
shouga123
5
文庫「気まぐれ美術館」の流れで購入した著作。軽い気持ちで手にしたものの赤まんま碑、三男の交通事故から始まる。あえてなのかそうなってしまうしかなかったのかどこか他人事の著者の振る舞いがさらに胸を打たれる。その後に続くエッセイの数々もすごいですね、やっぱ… それにしても口絵にもある靉光の「鳥」いかんとも形容する言葉は見つからないけどずっと見ていられますね2020/02/15
ウイロウ
4
銀座で画廊を営んでいた洲之内徹が、愛する画家たち(大半は同時代の洋画家である)と作品について静かに熱く語った私小説的美術エッセイ。「美術評論家」ではなく「絵好き」を名乗る洲之内にとって、いい絵とは即ち「買えなければ盗んでも自分のものにしたくなるような絵」であった。その言葉通り、有名無名を問わず多くの画家が取り上げられた本書からは、読み進むほどに著者の絵画に対する愛情がひしひしと伝わってくる。一方、画家を主題としていない「赤まんま忌」「倉敷の宿」などはまさしく私小説で、これがまた味わい深い。解説は車谷長吉。2013/06/06
びーちゃん
2
文章がうまい。これほど詳細に事実を記述できる能力がうらやましい。評価42011/01/16
ソフィ
1
仙台で洲之内コレクションを見たので。絵を扱っているといろんなシンクロが起こるんだろうなあと思う。作品そのものよりも、その周辺の物語で当時はさぞ人気を博したことだろうと感じた。辛辣といっていいくらいあけすけで、時々うなるような鋭い観察力。作品に対しても作家に対しても。それでいてご本人はダメ男キャラ。計算してないのだろうけどすごい。2021/12/18




