出版社内容情報
市兵衛が料理屋の店先で拾ってきたのは、酒問屋天野屋の若旦那だった。彼は実家のツケで放蕩にしていたものの、実家がツケを支払わなくなり、店から追い出されたのだった(「あほぼん」)。上方からの珍客女義太夫の母娘に続いて、浪人者が投宿した。何でも江戸に住む恩人に死ぬ前に一度礼をいいたくてやってきたという(表題作)。訳ありの旅人達を癒す佐和の一弦琴の調べ。人情時代小説傑作四編。
内容説明
市兵衛が料理屋の店先で拾ってきたのは、酒問屋天野屋の若旦那だった。彼は実家のツケで放蕩していたものの、番頭が代金を支払わなくなり、店から追い出されたのだった(「あほぼん」)。上方からの珍客女義太夫の母娘に続いて、浪人者が投宿した。何でも江戸に住む恩人に死ぬ前に一度礼をいいたくてやってきたという(表題作)。訳ありの旅人達を癒す佐和の一弦琴の調べ。人情時代小説傑作四編。
著者等紹介
藤原緋沙子[フジワラヒサコ]
高知県生れ。立命館大学文学部卒。人情時代小説の名手として、リアリティあふれる物語空間の創出、意外性に満ちたストーリー、魅力的な人物造形などが高く評価される(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しんごろ
165
二年ぶりの続編。個人的には待望の続編でした。様々な悩みを抱える客。つい悩みを打ち明ける雰囲気は、現代のBARのような雰囲気を醸し出してるのかもしれない。元武士の主人の市兵衛、一弦琴の名手の佐和夫婦、女中のおとらの三人で切り盛りする“へんろ宿”。小さい宿ながら、お客に寄りそう姿勢は、まさに真のおもてなしなのだろう。宿泊していく客は、きっと気持ちを新たにして旅立つのかもしれない。物語は、大がかりな事件とかはないけれど、今は薄れてる義理人情に厚い物語であり、作者が描く江戸の情景が見事で郷愁にかられる。2022/12/17
やま
63
① 笹岡市兵衛が、へんろ宿を開き、泊り客の相談にのる人情物語です。剣の遣い手でもある元旗本三百五十石の笹岡市兵衛は、奸計に嵌まって家が改易になったあと四国八十八箇所を巡り、江戸へ帰って武士を捨て、京の料亭で一弦琴(いちげんきん)を弾いていた佐和を市兵衛が口説いて女房にして一緒に回向院前でへんろ宿を営んでいます。お節介にも泊まる客たちの事情を酌んでひと働きします。 【こおろぎ】 徳兵衛は、江戸所払いになり、生まれたばかりの娘を呉服問屋「相模屋」に渡して江戸を出て行きました。→2023/03/07
真理そら
60
『へんろ宿』シリーズ。元武士でやや武骨な市兵衛と一弦琴を弾くおっとりした京女・佐和の夫婦のしっとりした雰囲気が『深川澪通り木戸番小屋(北原亞以子)』シリーズを思い出させる。冬の日差しの中でのんびり読むとなんだか幸せな気分になる。 2022/12/01
はつばあば
50
へんろ宿2巻目。美人の女将さんとヤットウの強いご主人に唯一の女中おとらさんが織り成す人情もの。しっとりじんわりの物語の中に人それぞれいうに言われぬ苦悩がある。それを三猿(見ざる聞かざる言わざる)をモットーとしながらそっと支えてくれるへんろ宿。ありふれた人情ものかもしれませんが、今はこういう行為もなくなりました。今朝福祉サービス協会の方が我が家の夫婦は羨ましいとおっしゃってくださったけど外から見るのと現実では随分違うのだが・・。昔から客の多い家だったし今だに好意という援助を受けられていることに感謝してます2022/12/11
のびすけ
25
市兵衛と佐和の夫婦が営むへんろ宿のシリーズ2作目。へんろ宿を訪ねる客に纏わる人情話4編。市兵衛は客が抱える厄介ごとの手助けをし、佐和の奏でる一弦琴の調べが客の心を癒す。淡々と読了。2023/05/28