出版社内容情報
鶯の鳴き声、花火の響き、鐘の音――。読む者の五感を喚起する新しい正岡子規伝。
三十五年という短い生涯ながら、明治期、俳句に短歌に果敢な革新運動をしたと評される正岡子規。彼が詠った詩句のなにげない情景は、いまなお読む者の五感を喚起する。松山から上京、神田、本郷、上野、根岸と東京を転々としたのち、東北旅行、日清戦争の取材を経て、晩年の十年を病に苦しみつつ「根アカ」に過ごした全生涯を、日常を描いた折々の句や歌とともにたどるユニークな正岡子規伝。
著者プロフィール
森まゆみ モリ・マユミ
東京都文京区動坂生れ。早稲田大学卒。1984(昭和59)年、季刊の地域誌「谷中・根津・千駄木」を創刊する。1998(平成10)年『鴎外の坂』で芸術選奨文部大臣新人賞、2003年『「即興詩人」のイタリア』でJTB紀行文学大賞、2014年『『青鞜』の冒険』で紫式部文学賞を受賞。他に『「谷根千」の冒険』『暗い時代の人々』『「五足の靴」をゆく』『お隣りのイスラーム』など著書多数。2019年10月現在、「谷根千〈記憶の蔵〉」を主宰し、公益財団法人日本ナショナルトラスト理事。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
piro
40
短いながら濃密な正岡子規の生涯を追った一冊。寂しがり屋で人好き。食いしん坊。自分勝手で図々しい所があっても皆それを受け容れてしまう魅力を持った人。生き生きと描かれた子規の姿にとても親しみを感じました。印象的だったのは芭蕉の足跡を追った東北行。まだ元気だった子規は精力的に歩き、目にした風景を素朴な句に詠みます。この頃の句は今で言う所のインスタの様な印象。替わって病床での句は、タイトルにもある様に音が詠み込まれた句が多い気がします。子規の出棺後、秋山真之が訪れた場面は『坂の上の雲』を思い出しました。2020/09/28
たま
34
2017年単行本、2019年文庫。子規の生涯を丁寧にたどった労作。記事、手紙、俳句や歌が時系列で紹介されるだけでなく、転居すれば転居あと、旅行すれば旅行あとを訪ね、友人や門人の消息も伝え、子規とその時代を丸ごと読者に手渡すかのよう。著者の森まゆみさんは、子規の句や歌から子どもの頃聞いた東京の町の音が聞こえると言う。私は東京に詳しくないのでその点が残念。充実した資料と調査に基づくだけでなく、三陸沖地震、日露戦争、男ばかりの交友関係など多くの面で、著者ならではの現代からの視線が随所に光る評伝である。2021/03/28
tsu55
23
正岡子規の評伝だが、子規その人のみならず、その周辺の恩人・友人・弟子などにも詳細に触れ、また根岸をはじめとする子規に縁のある土地の様子も生き生きと描写されている。それにしても子規の友人・弟子などに夭折する人が多いのには驚いた。2019/12/01
てん06
21
正岡子規の評伝。病気になってもなぜか明るく、食欲旺盛で短歌や俳句、旅に猪突猛進といった勢いで向かっていく。東京の地理に疎いので、おそらく地理的に思い入れのある筆者の温度はそのまま感じられなかったかもしれないが、力作。常に周りに人がいたのに、深夜に誰にも看取られずに亡くなった子規の寂しさが際立つ。2020/10/04
やま
18
以前から紹介されて読もうと思っていて、文庫本になったので早速購入した。正岡子規の生涯を縦軸に、子規が住んだ東京の当時の風景や子規と交流のあった多くの文人、歌人、俳人、画家、彫刻家など、そして、子規の母妹および周りの人の家族など様々な情報が含まれている。◇明治29年6月15日の津波について子規が文章とともに俳句を詠んでいることをうかつにも知らなかった。その描かれている風景は2011.3.11に重なる。◇そして、子規がずっと病臥しているなか音に敏感だったことを俳句を通じて示している。だから子規の音だ。良書。2021/03/12




