内容説明
彰義隊。朝敵の汚名を着せられた徳川慶喜のために、怒りをもって結成された戦闘集団である。彼らは、東叡山寛永寺に立てこもったものの、わずか一日で西郷隆盛率いる官軍の攻撃に散った―。著者はひそかに語り継がれてきた証言を丹念に発掘し、「烏合の衆」と軽んじられてきた人びとの実像に迫ってゆく。時代の激流にあらがった、有名無名の男たちを鮮烈に描く、記念碑的作品。
目次
墓を建てた男、小川椙太
幕末三舟
彰義隊結成と孤忠・伴門五郎
東叡山寛永寺
慶喜謹慎
栄一と成一郎
香車の槍、天野八郎
錦ぎれ取り、西虎叫畢
挿話蒐集
団子坂戦争
黒門激戦
輪王寺宮落去
戦争見物と残党狩り
三つの墓
隊士のその後、松廼家露八のこと
著者等紹介
森まゆみ[モリマユミ]
東京都文京区動坂生れ。早稲田大学卒。1984(昭和59)年、季刊の地域誌「谷中・根津・千駄木」を創刊する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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GaGa
49
新選組とかと違ってあまりフューチャーされない彰義隊。確かに上野戦争がなかったら、この大きな大転換についていけないものや、理解できないものは(特に江戸っ子)はもやもやしたまま、ずるずると火種をくすぶり続け、いつか大きな蜂起へとつながったのでしょうな。その為のカタルシスとして存在したと言う作者の見地は中々言いえて妙。中々丁寧にまとめられた良い本です。2012/04/17
かばこ
2
内容は面白いものの多少の読みづらさあり、特に前半。引用部分はそうでもないが、地の文。※理由を考えてみた→1)時々妙に調子の良いときがあって引用部分と混同してしまう。2)人物の紹介がドミノ倒しのように連鎖していく、醍醐味かもしれないけど、正直ええと誰のなんの話だったっけみたいになる。例:「○氏の祖父は…でその父・△は…で当時□に仕え、□は●家の…で~」3)筆者の思いが溢れているところに時々置いていかれる。2011/06/16
いちはじめ
2
賊軍のうえ、活動期間も短く、大きな手柄話もないだけに、実態のつかみにくい彰義隊について取材した好著。著者自身東京生まれのせいもあってか、彰義隊にやや同情的。2007/12/29
bittersweet symphony
1
彰義隊の結成から、たった一日での敗戦とその後函館まで転戦したり生還した人物たちの後半生までを追いかけた作品。著者のメインフィールドである下町を中心に、彰義隊に関わった人物の子孫に伝えられている口伝を可能な限り拾い上げ歴史資料とも対照しつつ書き上げているところがミソということになります。上野の山に集まったのがいかに様々な階層のそれぞれの動機や経緯を持った人物たちであったのかが実感できます。2010/05/26
T・Shirai
1
この本には長谷川伸の短編小説『幕末美少年録』についての文章がある。この小説は三河吉田藩から「藩命」で彰義隊に参加させられた吉田藩士の話しである。 長谷川伸は資料と聞書きからこの短編小説を書いたという。 当時、吉田藩は官軍と佐幕の両天秤にかけていたわけである。彰義隊が一日で敗れると今度は藩命で藩に戻され、彰義隊に参加した事自体封印されたわけである。こういう両天秤はあの当時各藩、親族内でもあったのではないか。 幕末から明治維新にかけての地方藩の動向は興味深い。長谷川伸のこの短編小説は是非読みたい。2015/10/20