出版社内容情報
さくらんぼ狩りツアーに、しぶしぶ父と二人で参加した桐子。普段は口数が少ない父の、意外な顔を目にするが――。珠玉の短編集。
家族全員で出かけるはずだった日帰りのさくらんぼ狩りツアーに、ふとしたことから父と二人で行くことになった桐子。口数が少なく、「ただのお父さん」だったはずの父の、意外な顔を目にする(表題作)。結婚を前に、元彼女との思い出にとらわれる男を描く「欅の部屋」、新婚家庭に泊まりに来た高校生のいとこに翻弄される女性の生活を俯瞰した「山猫」。川端賞受賞の表題作を含む短編集。
内容説明
家族全員で出かけるはずだった日帰りのさくらんぼ狩りツアーに、ふとしたことから父と二人で行くことになった桐子。口数が少なく、「ただのお父さん」と思っていた父の、意外な顔を目にする(表題作)。結婚を前に、元彼女との思い出にとらわれる男を描く「欅の部屋」、新婚家庭に泊まりに来た高校生のいとこに翻弄される女性の生活を俯瞰した「山猫」。川端賞受賞の表題作を含む短編集。
著者等紹介
青山七恵[アオヤマナナエ]
1983(昭和58)年、埼玉県生れ。筑波大学図書館情報専門学群卒業。2005(平成17)年「窓の灯」で文藝賞受賞。’07年「ひとり日和」で芥川賞受賞。’09年「かけら」で川端康成文学賞を最年少で受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
243
初読み作家さん。青山さんの文章、とても好き。登場人物の心の動きが、手に取るようにわかってしまう。そしてどの作品の主人公にもあっという間に引き込まれて、感情移入できてしまう。日常生活に「相手」が存在するからこそ、心に生じる感情のさざ波。そのさざ波を描くのが上手な作家さんだと思う。2016/06/13
おしゃべりメガネ
181
川端康成賞受賞作品で3編からなる短編集です。どの話も特別何か大きなコトが起きるワケではありませんが不思議と最後まで深く読ませてくれる独特な雰囲気があります。作者さんは小さなココロの揺れ、動きをとても丁寧に美しく描写する素晴らしい手腕だなと。なんてコトないただフツーに暮らしている日常のひとコマを、こんなにも瑞々しく描写できる作者さんの作風は、ココロを落ち着かせたいトキに手にとるにはピッタリなのかなと。こういう安定感抜群の作家さん、どの作品もしっかりと書かれていると思われるので、他の作品も読んでみようかなと。2020/01/19
じいじ
99
読友さんのレビューにひかれて手に取った。もちろん初読み作家だ。文章からは独特の個性と世界観を感じる。川上弘美と西加奈子を足して2で割ったような文体が、何ともよい読み心地である。どこにでもいるような平凡な父親と20歳の娘。そんな二人が思いがけず日帰りのさくらんぼ狩りバスツアーに行くことに…。そこで、娘は父親の意外な一面を発見する。表面は冷めたような父子の紋切型の会話が、何とも面白く愉快だ。やっぱり親子なんだ、ということを感じる(表題作)。他2短篇を収載。芥川賞受賞作の『ひとり日和』も読んでみたいと思った。2016/06/22
Willie the Wildcat
75
ふと気づく、心のモヤモヤ。自身の心底を認知するまでの過程も様々。写真、カーテン、そしてスリッパが記載3作品の気づきの一助であり、前進/決別の助力。ここ数年の両親の”変化”が頭に浮かんだ『かけら』。「孝行のしたい時分に親はなし」を実感し、後悔の念消えず。『山猫』は人生の転機において、心が不安定な中での”酸っぱい”思い出という印象。違う意味で私の場合、挙げたら切りがないかもしれない。一方『欅の部屋』は難解。忘れるために思い出す?う~ん。恋愛に限らずだけどすぐには思い浮かばない。人生経験が足りないんでしょうね。2019/06/24
hit4papa
67
「綿棒のようなシルエットの父がわたしに手を振って、一日が始まった。」。短編『かけら』はこの一文から始まります。女子大生とその父二人がはからずもさくらんぼバスツアーにいくというお話し。娘からみた父は、冒頭のような印象で、なんともうっとうしい限り。短い旅の中で、父の知らない姿を発見し、ちょっとだけ思いをあらたにするのですが、そのさじ加減が絶妙です。父娘の距離は圧倒的には縮まらないけれど、娘のほんの些細な気持ちの変化にほっこりさせられます。他『欅の部屋』、『山猫』ともに日常の中の大切なものが描かれています。2016/09/04