内容説明
この国の危機の本質は、その針路さえ決めずにいる戦略不在にある―。無資源国でありながら資源確保に遅れをとり、安全大国はもはや幻想となり、科学立国を標榜しながら政策はぐらつき、知財の基盤もゆらいで人材が流出して行く…。国家戦略という視点から、世界の中の日本を多面的に取材した驚愕のレポート。
目次
第1章 科学技術立国の危機(海亀派が牽引する「創新」;宇宙開発も外交手段 ほか)
第2章 漂流する海洋国家(竹島近海での衝突;韓国の周到な海底地名戦略 ほか)
第3章 自覚なき無資源国(資源を爆食する国;ショッキングな二通りの未来図 ほか)
第4章 安全大国の幻想(20年不在のP4施設;「日本は生物テロ容認の国」 ほか)
第5章 揺らぐ知力の基盤(覗かれていた特許情報;偽物が本物を駆逐する ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Hiroshi
3
2005年に始まった読売新聞の新聞連載「国家戦略を考える」まとめたもの。文庫本化は2009年。中国の台頭(2010年にGDPで抜かれる)や人口減少社会の到来といった大きな時代の変化に直面している日本は、中長期的な戦略を欠いており、国力は徐々に衰えていくという危惧感から書かれた本。科学技術・エネルギー・知的基盤・安全安心・海洋問題をテーマにしている。国家の基盤に関わる政策分野でも、政治家の関心が低いと政治のテーマになりにくい。政治記者の視点で取り上げれば、政治主導で是正が図られる切欠になるとの意図があった。2018/05/30
Ted
1
読売新聞で5年前に連載された企画に加筆した本。海洋開発・人材流出・特許侵害・資源外交などで後手に回り、戦略不在で迷走する日本の危機的状況は現在も進行中であるため、内容が古びていないところが残念。その原因は、大国と地続きで国境を接していない島国だからかと思ったが、同じ島国のイギリスは大変な戦略的国家なので、地政学的要因ではなさそうだ。日本人は、黒船来航や大東亜戦争敗戦などの徹底的な敗北を喫してからでないと目覚めない民族なのかもしれない。2010/08/21
うたまる
0
内容に特に目新しさは無い。しかしながらこれだけ暗い気持にさせられるのは、政治というよりメディアの問題。自らをぬけぬけと”第4の権力”と言い募り特別扱いを要求する割には、肝心の審査・提議・広報ができていない。日本に戦略が無い、というのもあるが、あったとしてもメディアがそれに気付けない事の方を憂慮してしまう。自己批判を決してしないメディアだが、その能力不足を指摘した言葉を本文中に1つだけ見つけた……「日本国内のメディアにはさっぱり注目されなかったが、競争相手に『やるな』と評価されるなんて」(外務省幹部)2012/04/12
m-freak
0
科学技術、そして、それを支える人材こそが日本の唯一無二の資源であるにもかかわらず、それらを守り、育てるためのビジョンが足りない。縦割り行政の弊害の大きさも改めて認識させられた。まずは省庁間の壁を取り除くことが重要だろう。それにはやはり、各省庁に入職するのではなく、国家公務員となった人間が省庁横断的に異動させられる体制を作り、省のためではなく、国のために働いているという認識をもたせる必要があるのではないだろうか。2012/01/13