新潮文庫
「坊っちゃん」はなぜ市電の技術者になったか

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  • サイズ 文庫判/ページ数 209p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784101361512
  • NDC分類 910.26
  • Cコード C0195

内容説明

『坊っちゃん』のラスト、なぜ漱石は主人公を「街鉄の技手」という職業に就かせたのか。佐藤春夫の『田園の憂鬱』で、主人公を「憂鬱」にさせた「汽笛の音」の正体は。『〓(ぼく)東綺譚』執筆時の荷風は、当時の鉄道風景に何を見つけたのか―。明治から昭和初期の名作八篇中の謎と、廃線や路線変更によって生じた鉄道史の迷宮とがクロスする。ミステリの味わいを湛えたスリリングな鉄道エッセイ。

目次

「坊っちゃん」はなぜ市電の技術者になったか―夏目漱石『坊っちゃん』
電車は東京市の交通をどのように一変させたか―田山花袋「少女病」
荷風は市電がお嫌いか―永井荷風『日和下駄』
どうして玉ノ井駅が二つもあったのか―永井荷風『〓(ぼく)東綺譚』
田園を憂鬱にした汽車の音は何か―佐藤春夫『田園の憂鬱』
蜜柑はなぜ二等車の窓から投げられたか―芥川龍之介「蜜柑」
銀河鉄道は軽便鉄道であったのか―宮沢賢治「銀河鉄道の夜」
なぜ特急列車が国府津に停ったのか―山本有三『波』

著者等紹介

小池滋[コイケシゲル]
1931(昭和6)年東京生れ。東京大学文学部卒、同大学大学院博士課程修了。東京都立大学、東京女子大学教授を歴任。専門はディケンズを中心とする19世紀英文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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美登利

70
タイトル借りした本。電車には高校通学時に三年間利用した以外、ほとんど乗らない私はテツ分不足にもほどがあり、本書を楽しむ余裕があまりなかったです(苦笑)明治から昭和初期に書かれた名作8編のうち鉄道に関する描写を捉えて、その当時の鉄道の謎解きをするエッセイです。3作は読んだことあるかな~、そうかそんな描写があるんだ!と思うだけで。鉄道がお好きな方、純文学がお好きな方にはあれこれ想像出来て楽しいのかも。田山花袋の小説は原文では読んでないけど、何かの本で読んだなあ、ストーカー小説って言い得て妙です。2016/09/01

へくとぱすかる

31
昼間読んだアンソロジーの勢いで元本を。解説の有栖川有栖さんによれば、「文学をめぐる鉄道探偵の知的冒険」。まさにそのとおりでした。そして小池先生の鉄分の濃さに恐れ入りました。通常の文学に物足りない読者にとっては、一服の鉄剤(笑)。小説に書かれた、鉄道関係の一言を決して見逃さない視線は、まさに探偵そのもの。エッセイではあるけれど、これはもはやミステリの領域だ。2016/09/25

退院した雨巫女。

13
《私‐図書館》推理小説を読んでるようでした。登場した小説を読んでみたくなりました。2011/05/17

maimai

8
漱石をはじめ、荷風、花袋、芥川など、明治から昭和初期の小説8篇中で語られる「鉄道」に焦点を当てたエッセイ。当方鉄道ファンではないが、読んでいてとても楽しかった。「作者が書いてくれなかったこと、ちらとだけ書いてやめてしまったことなどをほじくり返して、もう一度別の、あるいは裏の物語をでっち上げたくなるのが、私のくせなのだ」(p.10~11)。まことに結構な「くせ」ではないか。それどころか、花袋を題材にした二章などは、こうした考察を外してはこれらの小説を本当に味わえないのではないかと思わせるほどの面白さだった。2020/06/12

たくのみ

8
明治・大正期、最新テクノロジーの象徴だった鉄道。当然、作家たちにも衝撃を与えていた。近代文学史における鉄道が絡んだ作品を、オタクな視点で紹介する本。表題作より、田山花袋の「少女病」と、芥川龍之介の「蜜柑」の話が面白い。読んだことない佐藤春夫や山本有三も、こういう視点で紹介されると猛烈に読みたくなってくる。2013/11/24

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