出版社内容情報
歿後弟子・西村賢太の手になる代表作復刊で注目の私小説家・藤澤清造。貧窮の境涯と格闘し続けたその文業の全貌を示す13作品。
盛り場に遊ぶ友人たちに、恥を忍んで重ねる無心。瀕死の母を故郷に残した深い悔恨。子沢山の悲しみ。妻の不貞……。望んでいた理想の人生が、貧窮ゆえに潰えていく。大正から昭和初期、絶望の底を這いながら、なお淫心に翻弄され、自らもまた都市の無産者の運命を生きた文学者・藤澤清造。その小説、戯曲の秀作を歿後弟子・西村賢太が厳選。新発見原稿も収録し、才気と情熱を伝える。
内容説明
盛り場に遊ぶ友人たちに、恥を忍んで重ねる無心。瀕死の母を故郷に残した深い悔恨。子沢山の悲しみ。妻の不貞…。望んでいた理想の人生が、貧窮ゆえに潰えてゆく。大正から昭和初期、絶望の底を這いながら、なお淫心に翻弄され、自らもまた都市無産者の運命を生きた作家・藤澤清造。残された小説、戯曲を歿後弟子・西村賢太が厳選。新発見原稿も収録し、その才気と情熱を伝える。
著者等紹介
藤澤清造[フジサワセイゾウ]
1889‐1932。1889(明治22)年石川県鹿島郡(現・七尾市)生まれ。尋常高等小学校卒。骨髄炎の手術を経て、1906年上京。各種職業を変遷したのち、’22(大正11)年に書き下ろし長篇小説『根津権現裏』を刊行。’32(昭和7)年芝公園六角堂内のベンチで凍死体で発見される(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
gtn
25
良い格好しいなのだろう。例えば、地方出身なのに べらんめえ口調を多用したり、矢鱈カフェで食事を取るのも、その表れ。なのに、背伸び故か、不器用故か世間に受け入れられず、屈折している。落語のようなオチをつけた短編もあるが、後味が悪く笑えない。そんな人間の駄目な部分に、編者も親和性を覚えたか。2022/06/11
イズム(清瀬泉夢)
7
権現裏を読んではまってしまい、こちらも読了。解説にも書いてありましたが仮に駄作と呼ばれるものだとしても独特の味わいがあり、それが引き込まれる大きな魅力だと思います。戯曲もとても面白く、また違った一面を垣間見ることができました。貧困と性のものが基本ですが、本当に人間らしく、それでいて暖かく、少し勝手な考えを持つという人間の本質を見ました。癖の強い作品集ですがぜひ読んでもらいたい一冊です。2013/12/19
散歩いぬ
6
貧乏節炸裂。「根津権現裏」より、自虐的な、時にアイロニカルなユーモアが色濃く、くどい文章ながら飽かずに読めた。「お金」より「色」の方が心の振り幅が大きいからか、異性が絡んだ話は貧乏一点張りより面白い。その辺りの混ぜ加減の妙は歿後弟子・西村賢太の得意とするところ。ユーモア混じりとはいえ、病の話、貧乏の話は身につまされる。こうした切なさが人の世から無くなることはない。そう思うことで諦めとも救いともつかぬ僅かな安堵感が得られる。2012/06/08
yoyogi kazuo
4
戯作調で貧乏や性欲の鬱屈をボヤくスタイルの私小説ってそのまんま西村賢太じゃないか。今再評価すべき小説家かどうかは分からないが、刺さる人には刺さるのだろう。西村賢太の私小説が自分に刺さったように。2021/04/25
アメヲトコ
4
貧困と嫉妬と後悔が通奏低音をなしている短編集。それでもそこまで陰惨にならないのは文体の効果でしょうか。「刈入れ時」の味わいなどはとくに西村賢太氏の小説にも受け継がれている感じがします。その西村氏による解説にも情熱があふれていて良いです。2014/06/29
-
- 和書
- 電車痛勤あるある