内容説明
少年野球チームに所属する智は、こつこつ努力しているのにいつも補欠の六年生。がんばれば必ず報われるそう教えてきた智の父親で、チームの監督でもある徹夫は、息子を卒業試合に使うべきかどうか悩むが―答えの出ない問いを投げかける表題作のほか、忘れられない転校生との友情を描く「エビスくん」などを含む、自身が選んだ重松清入門の一冊。新作「また次の春へ」を特別収録。
著者等紹介
重松清[シゲマツキヨシ]
1963(昭和38)年、岡山県生れ。出版社勤務を経て執筆活動に入る。’91(平成3)年『ビフォア・ラン』でデビュー。’99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞を、『エイジ』で山本周五郎賞を受賞。2001年『ビタミンF』で直木賞、また’10年には『十字架』で吉川英治文学賞を受賞する。現代の家族を描くことを大きなテーマとし、話題作を次々に発表している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Smileえっちゃん
51
小学生が主人公の6編からなる短編集。冒頭の「エビス君」小学生なのにこのイジメ。こんなことがあるの?と・・・表題の「卒業ホームラン」監督としての立場と一人の親としてのジレンマが良く伝わってくる。1年から6年間、補欠の息子智君の健気さに心が洗われます。それにしても、重松さん、いつもながら親の心情や、子供心の描写がお見事ですね。他の短編集の中から選ばれた作品。すべてが再読だったが新しい気持ちで読みました。震災支援の為選ばれた作品なのですね。2021/02/06
ぼっちゃん
45
再読。重松清さんが自選された男子の短編集。タイトルの『卒業ホームランは』他の本で何度か読んでいるので記憶もあるが、少年野球の監督の立場と父親と立場の葛藤が絶妙。あと印象に残ったのは、虫が嫌いで不器用な父親とどことなく冷めた子供がサマーキャンプへ行く『サマーキャンプへようこそ』で、金八先生にあこがれ先生になった熱血教師とキャンプ場スタッフの子供はこうあるべきの決めつける人への父親の最後の一言が沁みました。2025/02/08
優希
39
少年の気持ちをなぞるのが上手いなぁと思わされました。胸にグッとくる短編が多かったです。女子編より刺さるのは、重松さんがそれだけ少年を描くのに長けているからでしょう。2024/12/28
タルシル📖ヨムノスキー
28
重松さんの自選短編集。こちらは男子編。どの話も再読ですが、何度読んでも心に染みます。特に表題作の〝卒業ホームラン〟の一節、「がんばれば、いいことがある。努力は必ず報われる。そう信じていられるこどもは幸せなんだと、いま気づいた。信じさせてやりたい。おとなになって『お父さんの言ってたこと、嘘だったじゃない』と責められてもいい、十四歳やそこらで信じることをやめさせたくはない。だが、そのためになにを語り、なにを見せてやればいいかが、わからない」本当にわからない。子供があれこれ迷う時、親だってやっぱり迷うんですよ。2022/09/09
ひでちん
24
重松流の全6編の単独短編集。 [男子編]とあるが、他の短編集に入ってた話が多々あり、読んだ事のある物ばかりだったが再読感覚で楽しめた。 第1編:生まれつき心臓に疾患のある妹ゆうこを持つ小6の兄ひろしと転校生エビス君話。 エビス腹立つ‥‥まぁでも、ゆうこちゃんが良かったなぁ~ 第6編:母亡き後の親父が作ってくれた何故かもやしが丸々1袋も入っている豚汁‥‥‥それが後々も兄姉弟達の心を支える味になる、お袋の味ならぬ『親父の味』に泣けた‥‥2023/04/27