内容説明
1997年11月、100年余の歴史に幕を下ろした山一証券。だが、企業を舞台にした組織犯罪劇は、やっと中盤にさしかかったにすぎなかった。破綻パニックの中で大量に処分されていた極秘文書、最後の経営陣によって封印された二つの報告書の存在を知った取材班は、再調査に乗り出す。その結果、浮かび上がった会社消滅の真相とは―。密室謀議の息遣いまでが聞こえる傑作ドキュメント。
目次
第1章 パンドラの箱
第2章 二つの遺産
第3章 内務官僚
第4章 組織犯罪
第5章 幻の再建計画
第6章 破綻への迷走
第7章 百一年目の終焉
第8章 背信の階段
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hatayan
43
1997年に山一証券が自主廃業に追い込まれるまで。『しんがり』の清武英利氏が読売社会部の時代の99年に編集。 破綻の遠因は現場と隔たりのある企画部門出身者がトップを務める社風にあり、65年の金融恐慌で大蔵省に救済された体験が逆に甘えにつながったと指摘。粉飾の手口を知る者を監査役に就けて隠蔽を強化し、秘密を知る者が出世。91年の損失補填、97年の総会屋への利益供与、同年の簿外債務発覚という三度目の行政処分で山一は大蔵省に自主廃業を宣告されます。等身大のサラリーマンが失敗を連鎖させた記録として読める一冊です。2020/05/17
もりお
19
あの時はびっくりしたなぁ~という感じ。今ではどこがつぶれてもおかしくなくなっちゃった!国がつぶれないか心配。選挙ばっかりに大金使ってさ。2016/07/10
yokmin
10
山一は大企業病により潰れたのだ。巨額の簿外債務も相場が好転すれば消せる、だめでもまさか大蔵省やメインバンクが見捨てることはなかろう、4大証券の一つが倒れることはないと楽観していたのだ。中央監査法人も極めてオソマツ。株主が中央を訴えたに対し、大阪地裁が無罪判決を下したのは全く頷けない。2011年にはオリンパスで同様の粉飾決算が発覚した。先人経営者の過ちを公にすることをためらう企業文化は今も続いており、同じような事件がまた発覚しないという保障は全くない。仮に自分が社長であったら、同じことをしたかもしれない。2014/01/12
ango28
3
大学生の時に住んでいた街に山一証券のビルがあった。97年に破綻した後もずっと山一証券という文字看板がビルの側面高くに掲げられていて、でもやがてそれも外される事になった。けれども文字の裏だけが日焼けを免れた為に、薄汚れたビルの側面に記憶だけを留めた様で見上げる度に侘しさを覚えた。その街に住まない今は、それが残っているのかまたは風化したか塗り替えられたのか確かめる術もないが、自分にとっての山一はやがて消えてなくなる日焼けの痕の他に何もない。2011/02/01
TERRY
2
日本の文化では、サラリーマン社長ってムリなのかもと思わずにはいられない。2018/07/14