内容説明
「マークスさ。先生たちの大事なマ、ア、ク、ス!」。あの日、彼の心に一粒の種が播かれた。それは運命の名を得、枝を茂らせてゆく。南アルプスで発見された白骨死体。三年後に東京で発生した、アウトローと検事の連続殺人。“殺せ、殺せ”。都会の片隅で恋人と暮らす青年の裡には、もうひとりの男が潜んでいた。警視庁捜査一課・合田雄一郎警部補の眼前に立ちふさがる、黒一色の山。
著者等紹介
高村薫[タカムラカオル]
1953(昭和28)年、大阪市生れ。’90(平成2)年『黄金を抱いて翔べ』で日本推理サスペンス大賞を受賞。’93年『リヴィエラを撃て』で日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。同年『マークスの山』で直木賞を受賞する。’98年『レディ・ジョーカー』で毎日出版文化賞を受賞。2006年『新リア王』で親鸞賞を受賞。’10年『太陽を曳く馬』で読売文学賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
134
30年ぶりくらいに久しぶりに読み返しました。「リヴィエラを撃て」はなんども読み返しているのですが、この本は2回目です。主人公の刑事がその後の高村さんの小説には幾度か顔を出すのですが、これが最初なのでしょう。上巻では連続殺人事件とその犯人がなぜということがまだわからないままに話が進んでいきます。やはり高村さんらしく描写が克明で読むためにはかなり体力・気力が必要だと思います。最近のライトのベルになれている人には読み通すにはしんどいでしょうね。2018/02/05
小梅
133
「レディ・ジョーカー」を読了後、合田刑事が登場する作品が他にもあると知り読み始めました。「レディ・ジョーカー」にも登場する合田刑事、加納検事、新聞記者の根来。合田刑事が若いのと彼が苦悩する姿にちょっとキュンとします(笑)さて下巻へ2016/08/29
ちょろこ
121
次第に惹きつけられていく、一冊。パラリと立ち読みしただけで、あ、好きかも…読みたいという直感に襲われた。が、それもつかの間、しばし山はおあずけ状態の展開に正直残念な気持ちに。登場人物がとにかく多い警察小説、警察内部の複雑な人間関係が苦手な分、不安感は倍増。中弛みを感じつつも次第にあの最初に手にした時の直感が蘇り惹きつけられていく。あの過去の山の事件と現在都内で起きている事件との繋がり、真相を求めてこのまま下巻へ。2019/12/02
優希
51
硬質で淡々とした語りの中にも人々の暗さを感じました。殺せ。暗黒の山が目前にあるようでした。下巻も読みます。2024/03/16
道楽モン
48
本作品にて直木賞。前作『リヴィエラを撃て』で既に実力を見せつけており、本作で納得の受賞。合田雄一郎がいよいよ登場。シリーズの第一作目だ。映像化もテレビ、映画となされているが、当然ながらサスペンス方面に脚色されている。原作の肝は、公務員としての警察官が組織の中で、いかに職務をこなすかという点だ。霞が関から桜田門への圧力、本庁と所轄による捜査本部の力関係、捜査会議での怒涛のやり取り。ノンキャリアでの出世頭である合田に対して、横からの対抗意識が物凄い。取材を重ねた上で描かれる、公務員の競争原理が生々しい。2024/05/06