内容説明
城山は、五十六時間ぶりに解放された。だが、その眼は鉛色に沈んだままだ。レディ・ジョーカーを名乗る犯行グループが三百五十万キロリットルのビールを“人質”に取っているのだ。裏取引を懸念する捜査一課長に送り込まれた合田は、城山社長に影のごとく付き従う。事件が加速してゆく中、ふたりの新聞記者は二匹の猟犬と化して苦い臭跡を追う。―カオスに渦巻く男たちの思念。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
424
日之出麦酒社長の城山、現職刑事の合田、そして事件を追う記者たち。それぞれは、いずれも組織の中にいて、その中で精一杯の「個」を発露するしかない。それは、大いなるジレンマなのだが、勝負は最初からついている。この小説は、そうしたせめぎ合いと軋轢の中で圧殺されそうになる人物群を描いてゆく。唯一、犯人たちだけが、そうした状況からドロップアウトした位置に立っていたのだ。捜査の網も次第に狭まってきたし、どうやら事件としての結末も見えてきたようだ。しかし、おそらくはここから本当の意味での葛藤が用意されていそうである。2018/05/22
KAZOO
150
こんなに、会社内の事を書かれていたとは、すっかり忘れていました。高村さんはよく調べておられると感じました。また警察内部のあり方もかなり克明に記されています。マークスの山の合田が、ビール会社の社長のセキュリティポリスのような感じでついています。犯人側は中巻ではあまり出てこない感じですね。久しぶりにきちっとしたミステリーを読んでいる感じです。2018/02/12
小梅
140
城山社長と合田刑事のやり取りに引き込まれるようだ。 いよいよ下巻に突入します。2016/07/26
yoshida
119
中巻は警察、日之出経営層、新聞記者の視点で描かれる。犯人グループに拉致された日之出の城山社長。犯人グループの脅しから身内を守る為、社内と警察を欺く決意をする。犯人グループが動き出し、異物混入のビールが発見される。振り回される日之出経営陣と警察。合田は城山の身辺警護と監視を行い、とある符牒に気付く。じりじりした心理描写が続く。城山は実際、心身共に限界と思うが胆力がある。私が城山の立場であれば、解放された時点で警察に全てを話してしまうだろう。一人で煩悶することは並の人間には厳しい。犠牲者も出る。結末は如何に。2021/07/17
しげき
84
作者はその業界に身を置いていたのかと思うくらいに、警察や企業の細部が丁寧に描かれていました。前作の照柿を読んだ時も思いました。いよいよ下巻へ!2020/11/06