内容説明
私は彼のすべてを望んだ、その存在も、不在による空虚さも―。45歳の翻訳家・柊子と15歳の美しい少女・美海。そして、大胆で不穏な夫。彼は天性の魅力で女性を誘惑する。妻以外のガールフレンドたちや、無防備で大人びた美海の心を。柊子はそのすべてを受け容れる、彼を所有するために。知性と官能が絡み合い、恋愛の隙間からこぼれ出す愉悦ともどかしさを描く傑作長編小説。
著者等紹介
江國香織[エクニカオリ]
1964(昭和39)年東京生れ。短大国文科卒業後、アメリカに一年留学。’87年「草之丞の話」で「小さな童話」大賞、’89(平成元)年「409ラドクリフ」でフェミナ賞、’92年『こうばしい日々』で坪田譲治文学賞、『きらきらひかる』で紫式部文学賞、’99年『ぼくの小鳥ちゃん』で路傍の石文学賞、2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、’04年『号泣する準備はできていた』で直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
456
75歳の桐子と45歳の柊子、そして15歳の美海。もう一人、40代とおぼしき美海の母の涼子が登場する女たち3世代の恋物語である。もっとも、桐子はどうやら恋からはリタイアしているようだが。物語の前半は、主として柊子の視点からの恋が語られるのだが、やがてそれは美海に奪われてゆく。柊子も十分に魅力的ではあるが、それはいわば完結している。一方、美海は気まぐれであり(実態は別としてそのように見える)、可変性に富んでいる。しかもコケットリーに溢れてもいる。柊子にはそうした未来が見通せていただろう。恋はいつも残酷である。2020/07/02
優希
109
隙間から落ちるような恋愛を感じます。柊子と原さんの関係の甘やかさが、全てを受け入れる官能のように見えました。15歳でありながら大人びた心を持つミミを受け入れたのも、原さんへの想いをつないでおくためなのかなと思いました。それでも柊子にとっていつかは通り過ぎてしまう存在なのかもしれません。3人の関係は永遠ではないように思えました。がらくたのようにこぼれ出す想いがいつしか募っていくような気がしてなりません。2016/05/12
aoringo
95
一組の夫婦。深く愛し合っているのにお互い情事を重ねる。夫は気の赴くままに女性と会い、時には妻にもそれを勧めようとする。なのに二人は心底愛し合っている。私にとってみると???な関係でした。ハイテク過ぎてそこは上手く飲み込めなかった。他にも帰国子女の女子高生、正直で愛されキャラのおばあさん、出てくる人はどれも魅力的。夫婦関係は謎だったけどお話の持っている洗練された雰囲気はとても好みで満足できました。2022/08/03
Take@磨穿鉄靴
74
江國香織氏は初かな。何の先入観も無くとりあえず「がらくた」って何を指すのか考えながら進む。なんだか既視感があるのは小池真理子氏の書く本に似てたからかな。取り立てて掘り起こす内容は無く恋愛と言うには冷えた、寂しい人達のお話。クールにいろんなところに手を付けるのも良いけどある程度まできたら後は大切な人達との密度を高めたいと自分なら思う。「がらくた」。何を指すのか分からなかったけど個人的にはここに出てきた人達のことを言ってるのかと感じた。★★☆☆☆2019/06/04
ぶんこ
68
責任感の無い大人って、子供にとっては楽で魅力的なんでしょう。原さんが責任を持つ事ってあるのかな?子供のいないオシャレな夫婦のようでいて、本当の家族にはなっていないと感じるのですが? 家族って、自分のみっともない面もさらけ出して、一緒にテレビを見ながら食事したり、だらしの無い夫に文句を言ったりしながらも、最後まで責任を持ち合う夫婦が素敵。大人の物語というよりは、ミミが15歳だろうが、試験中だろうがお酒を飲ませ、ホテルに行くなんて、我儘な原さんと我儘なミミ。理解できない。2016/07/19
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