内容説明
果歩と静枝は高校までずっと同じ女子校だった。ふと気づくといつも一緒だった。お互いを知りすぎてもいた。30歳目前のいまでも、二人の友情に変わりはない。傷が癒えない果歩の失恋に静枝は心を痛め、静枝の不倫に果歩はどこか釈然としない。まるで自分のことのように。果歩を無邪気に慕う中野くんも輪に加わり、二人の関係にも緩やかな変化が兆しはじめる…。心洗われる長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
154
"不倫の恋が不毛だなんて不実だなんて誰に決められるの。私はこうふくです" 全身で攻撃することでこころを守ろうとしているようにしか見えない貴女の姿、いまにも倒れそうなほど傷だらけに見えるの。ピクニックもドライブも、ひとりもふたりもどっちも好き。でも願わくば、ひとりが独りじゃないといい。いつでも(今何時だからとか電話したら迷惑かもとかふと思いもしないほどにいつでも)呼びだせるぬくもりが思い出せて、すぐにキスができると知っているひとりは、限りなく贅沢だ。肌寒いよるは身を寄せあって、2020/10/04
優希
117
つかみどころがないけれど、心が静まるようでした。ずっと一緒に過ごしてきた果歩と静枝。お互いを知りすぎているからこその友情が、何かあると自分のことのように感じてしまうのだと思います。中野くんが加わったことで微妙な関係の変化はあっても、果歩と静枝の間の空気感は2人しかわからない世界なのでしょうね。このまま穏やかに時間が過ぎていけばいいなと感じました。2016/05/13
オリーブ子
100
再読。多分、何度か読んでいる。ラストはすっかり忘れてしまっていて、途中で「これだったかな」って思ったのと違うラストで、でもすごくよかった。爪をきれいにしようと思ったのはこの本影響。きれいに整えられた爪を見て、果歩が自分は大人だと再確認するところが好き。実は水泳も、やりたいなって思っていた。高校の時の親友を思い出す。高校の頃と20代の私たちと。個人的な記憶に刺さる小説。作中に引用されていたり、あとがきに載っていた詩も好き。2017/03/05
aoringo
90
妻子ある男性との恋にどっぷりの美術教師と、その親友の眼鏡屋の店員である主人公もまた過去の不倫相手のことを引きずっていた。序盤はどちらの女性も好きになれなくて読む手が止まりがちだった。恋している時特有の不安な気持ち、会えない時間の心細さよりも愛されていることへの傲慢さが鼻についた。でも、せつなさを見て見ぬふりするのが上手いのは若さ故か...そう思うと自分よりも年下の彼女達が何だか愛しくも思えて、最後には素直に幸せを願うことができた。2022/12/10
エドワード
78
江國香織さん三十歳の作品。幼さと成熟が同居する、果歩と静枝も三十歳。二人は小学生からのつきあい、大切な時間も余分な時間も、たくさんの時間を共有して来た相棒だ。余分なことが大好き、という江國さんのエッセンスがつまった作品だ。トラベルミンやゲーム盤などのアイテムの使い方がうまいね。終幕の、果歩が卒業制作の作品を見に行く場面、<十八年前にこれを作った私と、何ひとつ変わっていない。>というモノローグがいい。ここまで胸キュンな作品は彼女以外あり得ないなあ、と感じたのが二十年前。「ちょうちんそで」はまだ遠い先の頃。2015/08/08