出版社内容情報
阿刀田高/あさのあつこ/西加奈子/萩原浩/北村薫/谷村志穂/野中柊/道尾秀介/小池真理子/小路幸也
内容説明
人は生涯の3分の1を睡眠に費やすともいわれる。となれば、眠りの世界はまたもうひとつの人生。夢の中の私が抱くまっくろな後悔やぎらつく殺意に、現の私はどきり、とする。もしかしたら、夢はこちらの人生のほうではないかと―。「こんな夢を見た。」の名文句で知られる、漱石の『夢十夜』から100年。現代の作家たちが競演する、恐ろしくも美しい、まぶたの裏の十夜のお話。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モリー
64
こんな夢を見た。眠れなくなる夢だ。眠れないのだから、自分が夢を見ている事すら判然としなくなり、やがて夢と現実が逆転する。現実だと思っていたことが本当は夢で、夢に見たと思っていたことが現実ではないなどと、とどうして言えるだろうか。▼夢の中の自分は、空を飛んだかと思えば、同じ試験に何度も落ちたりする。普段は気持ちの底に沈んでいる願望や恐れが浮かび上がるのが夢なのかもしれない。▼「こんな夢を見た」から始まる10編のうち、阿刀田高、あさのあつこ、小路幸也の作品が、今の私には響きました。2020/12/21
里季
62
夏目漱石の「夢十夜」になぞらえた、そうそうたる作家さんたちのアンソロジー。どの話も不思議だったり、人間のこころの奥底が窺えたりする。阿刀田さんはさすがといえる。荻原浩の長い長い石段の先の恐怖、道尾秀介は彼お得意の虫を登場させてゾッとさせる。眠れないほど怖くはないのだがそれが余計に背筋が寒くなるような感覚を与える。2014/08/22
ケイ
61
「こんな夢を見た…」と始まる漱石の「夢十夜」に見立てて、作家一人一人が夢の話を書く。第一夜の阿刀田氏、男と老人が殺したかもしれない女を待つ話は、原作を充分意識して幻想的に仕上がっていて流石だ。第八夜の道尾氏、盲女とその女衒の話の妖しさ・虚しさも負けてはいない。最後の小路氏の夢は、漱石へのオマージュだろうか、「こころ」をもじっているのだが、そのトリックが私には読み解けなかった。あさのさん、谷村さんの話は、最後がよかったが、夫婦の愛情話の域を出ず、漱石には太刀打ちできない。2014/01/28
しゅてふぁん
56
「こんな夢を見た。」で始まる、10人の作家による夢の話。漱石の夢十夜とは違って、明らかに異なった人たちの見た夢だと分かるのが楽しかった。一番夢っぽいなと思ったのは「柘榴のある風景/野中柊」、惹き込まれたのは「盲蛾/道尾秀介」、お気に入りは「輝子の恋/小路幸也」。私も夢は見るほうなので、こうやって物語が書けるかな。でも断片的にしか覚えてないから難しいかな。そんなことを考えながら読み終えた。今日はどんな夢を見るかしら。2019/05/21
ピロ麻呂
39
夏目漱石をリスペクトする作家陣のそれぞれの「夢十夜」。すべて、こんな夢を見た…で始まるストーリー。どれも素晴らしく不思議な作品です。その中でも最後の小路幸也氏の作品が1番好き(≧▽≦)「こころ」も意識したラブストーリーで、いい夢を見させてもらいました(^_^) 2015/11/04