内容説明
生まれ変わりたいと思うことだけが生きがいの人間にとっては、自分の国も家庭も必要ではない。16歳の少年我利馬は貧しさで身動きならない生活に訣別すべく、独力でヨットを作ることを決意した。試行錯誤の末にヨットは完成し、彼は船出した。嵐に巻き込まれ漂着した不思議な国で、我利馬はやさしさに満ちた人々を知った。―真の自立を求め苦闘する少年の姿を描く、希望と再生の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
momogaga
34
灰谷版のガリバー旅行記は、読み応えがありました。成長物語として感動させられ、海洋冒険小説として自然との向き合い方を考えさせられた。良書にめぐり会えたことに感謝。2024/11/30
tono
5
生き抜く。それ以上でも以下でもない。過酷な生い立ちと成長を経てきた主人公、我利馬(ガリバー)。本作は、人間同士の真の友愛、人間として生きることの究極の核のようなものに、生命を削るかのような峻厳な姿勢で迫る著者渾身の逸策。 人間としての尊厳がいかなるものか。それは我利馬の航海に似て、苦しみを苦しみで乗り越えるところに結晶化される。 「世の中は確かに不公平だが、そうだからといってあきらめたり、自暴自棄に陥っていたのでは、不公平はいっそう増幅されるだけである」 真理の扉は自ら開いていくしかない。2015/09/02
FK
3
最近になって、もう一度灰谷健次郎を読み直してみようと思って。といっても、まずは読んでない本から。本書は言うまでもなく『ガリヴァー旅行記』(Gulliver's Travels ジョナサン・スウィフト作)を下敷きにしたものだろう。漢字で書かれたガリバーは新鮮。どんな話になるのか、と。そしてやはり「巨人国」に到達するわけだ。そして、作者の意図に反してそこで終わっているが、あとがきによると実はもっと長編にする予定だったようだ。/人間はどんな場合でもどんなにしてでも人間であろうとするのではないか。(P.110) 2017/06/27
クジラ
2
不幸を背負った少年が、自分でヨットを作成し、大海原へ船を出す。大嵐のあとには・・・。そう、主人公はガリバーという名前だった。途中までそれを全く意識していなかった。灰谷氏の小説は、純度が高いというか、非常に純真な小説という印象。青年期に読むといいなぁと思う一方、大人になった今でも一読の価値はあるな、とも思う。青春を思い出させる力がある。2012/09/30
英樹
1
高校生で始めて灰谷さんの本を読んでから早、何十年。久々に灰谷文学を感じさせて頂きました。今までエッセイや物語を読ませて頂いてこの作品はまさに灰谷さんが訴え続けた作品だと感じました。自分自身のことでもあり教師生活時代のことであり作品自体は自分が高校生の時に書かれた物みたいでこの作品を目にしなかったことが不思議に感じます。兎の目や太陽の子と同じことを表現しようとしてるようで実は全然違うことを表現してるような・・・。当時、読んだとしてもそんな風に感じなかっただろうと想うと今、読んで良かったのだろう。2012/04/21
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