内容説明
「おじいちゃんのとこ、いってくるわ」ドアの閉まる音がして、淳は家を出ていきました。これが、私たち家族と淳との永遠の別れになってしまいました―。1997年5月に起きた「神戸連続児童殺傷事件」。14歳の少年に我が子を奪われた父が綴る鎮魂の手記。眼を細め見守った息子の成長から、あの忌まわしい事件の渦中の出来事、そして「少年法」改正に至る闘いまでを、被害者遺族が詳細に描く。
目次
誕生と成長
永遠の別れ
変わり果てた姿
捜査
犯人逮捕
少年と人権
不信
報道被害
少年法
供述調書
卒業、そして一周忌
著者等紹介
土師守[ハセマモル]
1956(昭和31)年、神戸市生まれ。神戸大学医学部卒。放射線科医師。’97(平成9)年5月、「酒鬼薔薇聖斗」と名乗る少年の凶行により、当時小学校6年生だった次男、淳君を失う。’98年秋、絶望の淵より一語一語、心を込めて綴った鎮魂の手記『淳』(本書の単行本)が広く全国の読者の共感と感動を呼んだ
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
むーちゃん
122
桶川ストーカー、山口県光市母子殺害 の2冊を読んだあと読了。 3作に共通するのは、被害者側の人権が疎かにされており、マスコミの汚い部分で二回殺されたも同然であること。何かが間違ってます。このあと、加害者、加害者の父母側の書物も読む予定ですがやりきれない。 マスコミも、世間も本当に自分の身内が同じ様になっても、このようなことができるのでしょうか?私はできません。 2020/01/07
鉄之助
108
少年Aによって、愛息・淳君を残酷に殺された父の冷静なドキュメンタリー。加害者は「少年法」によって守られるのに、被害者は二重三重にも被害を受ける実態を赤裸々に綴る。巻末の本村洋さんの解説もたまらなく、良かった。本村さん自らも、山口・光市での妻子殺害事件の被害者で、犯人は18歳の未成年。「この本によって、人生を救われた一人として、感謝の気持ちを込めて解説を書かせていただいた」と独白。2018/08/19
リキヨシオ
40
少年Aによる手記が波紋を広げる中で「被害者の気持ちを考えると…」という声も多い、じゃあ自分は被害者の何を理解しているのか?この気持ちは自分が抱く少年Aへの個人的な感情じゃないかと疑問に考え読んだ。この手記では亡くなった淳君の人生や愛おしさが語られる一方で、事件後遺族を苦しめた、少年Aやその両親、マスコミの非常識な対応、少年法の問題点についてが…どのニュースやネットの声よりも遺族自身がもっとも冷静かつ客観的に述べている。読み終わり…やはり自分は被害者家族について固まったイメージしか持っていなかった…痛感。2015/06/19
金吾
31
読みながら悲しさとやるせなさ、怒りを感じました。許せないことだらけでありながら、土師さんはかなり押さえぎみに書かれています。人格者ぶり犯罪を社会のせいにしたがる識者やマスコミは軽蔑します。2024/04/20
スー
30
突然、最愛の子供を殺され無惨な姿にされた両親の悲しみと怒りに胸が押し潰されそうでした。しかも犯人のAは近所の子で淳君がたびたび亀を見に家に行っていたし、行方不明になった時はAの母親が訪ねて来ていたほどで淳君の両親と兄の衝撃は想像も出来ないほど大きいものだった事でしょう。Aの両親の対応に腹が立ちましたが、それより腹が立ったのがマスコミの取材攻撃と嫌がらせ電話と手紙でした。被害者遺族はただでさえ傷付いているのに、捜査の進捗情報も知らされずAの両親からの謝罪も無くマスコミの取材攻撃で休む間も無く、報道は犯人の→2018/06/17