内容説明
2015年2月20日未明、凍てつく風が吹きつける多摩川の河川敷で、上村遼太君は全裸で息も絶え絶えに草地を這っていた。カッターで全身を43カ所も刺されて―。後に殺人などの容疑で逮捕された3人の未成年者が法廷で明かした理不尽な殺意。彼らに反省の色はない。そして互いに責任を擦り付け、攻撃し合う被害者の両親…。無辜の少年はなぜ命を奪われたのか。緻密な取材を基に深層を炙り出す。
目次
第1章 惨殺(邂逅;亀裂;呼び出し;殺害)
第2章 家族(家族の誕生;西ノ島;離婚;川崎;中学時代)
第3章 逮捕(遺体発見;さまよう;献花;捜査;通夜)
第4章 犯人(裁判;虎男の生い立ち;剛の生い立ち;暴走;判決;全面否定;携帯電話のせい)
第5章 遺族(インタビュー;家族のひずみ;家庭裁判所と加害者家族;加害者の責任;判決への疑問;復讐;思い出)
著者等紹介
石井光太[イシイコウタ]
1977(昭和52)年、東京生れ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yoshida
121
川崎市中1男子生徒殺害事件のルポ。犯行は普段からつるんでいた3人の少年が行った。双方の育った環境や、生活状況にも問題がある。双方の親にも問題がある。なぜ3人の少年の誰も暴行を止めなかったのか。保護観察中だが飲酒や賽銭泥棒、深夜徘徊、暴行をする。保護観察所の関与、その在り方も問われるべき。リンチ殺人を犯した3人は未成年の為、20代後半には出所する。思いたくないが、3人は再び罪を犯すだろう。被害者父の「運が悪かった」という諦念。勿論、被害者父は納得など出来まい。家庭や学校で幼少から倫理教育に力を入れるべき。2021/02/12
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
88
読み進むにつれてやるせなさと、虚しさと、そして怒りが込み上げてきた。川崎市で起こった少年の殺人事件。犯人は遊び仲間の先輩達。僅か13歳の少年がさしたる理由もなく43回もカッターナイフで滅多切りにされた上、真冬の多摩川を泳がされ、命乞いも虚しく生き絶えた。加害者となった少年たちは確かに家庭環境にも問題があり、所謂発達障害であったと思う。だが、だからと言って情状酌量されるべきものではない。人として持つべき最低限の感情でさえも失っているとしか思えない。僅か数年で本当に罪を償えるのだろうか?★★★★2021/02/27
akiᵕ̈
53
あれから6年。薄らと記憶している凄惨な少年事件。その真相に迫ったルポルタージュ。知られざる事件の真相・背景の裏から見えてくるのは、やはり親の愛情のかけ方とその生育環境がどれ程の影響を与えているかという事。被害者の少年も加害者の少年たち(3人)も、家に居場所の無かった子たち。加害者3人の内2人が保護観察中の身であるにも関わらず起きた事件だが、保護司の人材不足の問題、その他警察の対応の問題など、当事者以外にも様々な諸問題が事件を根深くさせ、被害者家族に降りかかってくる苦痛は想像以上に耐え難いものなのだと知る。2021/01/12
やんちゃジジイ
39
加害者と加害者の親共々クズだ。親がクズだから子供もクズになる。しかし何と言っても被害者の母親が最強のクズだった。残された被害者の兄弟がクズにならないよう祈る。2021/02/09
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
27
川崎で起きた中1の少年のリンチ殺人事件。遊び仲間にカッターナイフで43回切りつけられ、全裸で川に入るよう強要され、頭をコンクリートの堤防に打ち付けられ放置され死亡。殺された時の経緯が憎しみのあまりと言うにはあまりに曖昧で、もしかしたら死ぬかもみたいな感じ。面白がっているのともちがう。彼らの関係も楽しく集まって遊んでいる感じではなく、彼らの親も子どもに対して途方もなく無責任。結審した後、彼らの友人だった男性に話を聞こうとするが、スマホを見ながら「なんだろ?ひまつぶし?」みたいな返事。いろいろやりきれない2023/03/28