内容説明
「殺してくんろ。そいつは化け物んがんだ」。密通相手に肉体の秘密を暴かれた涼之助は、山妣の棲み処といわれる山に迷い込み、辿り着いた洞窟で獣じみた白髪の老婆に遭った一白日に曝され、凄まじい真実を炙りだしてなお蠢く愛憎。そして村は熊狩りの日を迎え、愛憎劇は雪山になだれ込む。業の炎に自らを焼き尽くす者、因果の軛から逃れようと喘ぐ者…白雪を朱に染める凄絶な終章。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
131
直木賞】上を読み始めてから2週間。なかなか読み進まなかった。少し読んでは、ついていけずに別の本へ。なんども中断しながら、ようやく読了。又鬼(マタギ)、山師、遊女、芝居。壮絶な物語が最後に辿り着くのは。参考文献一覧作成中。2014/05/06
hit4papa
64
明治末期、東北の旧炭鉱町を舞台に濃密な人間模様が描かれた作品(下巻)。両性具有の旅役者、そして妓楼を逃げた娼婦の運命が重なっていきます。まさに、因果はめぐるよ糸車です。子を喰らい鬼の伝説を含め、上巻の伏線がミステリのごとく回収され、さらに濃密さが増してくるという趣向になっています。匂いたつような人肌のねっとりした感覚と、心身を痛めつける寒さが絶妙に表現されています。結局のところ。ホラーじゃないのですが、終盤にかけてのよく人が死んでいくハラハラ興奮度はホラー並み。こりゃあ大した作品ですわ。大満足。【直木賞】2018/06/12
takaC
49
予想以上にすごかった。この国は怖い。2019/06/06
kaoru
42
山姥が物語の軸になっているのが面白い。舞台となっている時代に取り残された山里や閉山間際の鉱山の描写がリアルで、そこに住む人々の閉塞感とたくましさが上手く描かれています。ただ、ラストのまとめ方が残念。2017/07/28
エドワード
40
子供の頃、「やまんばのにしき」という絵本を買ってもらった。他の日本昔話にもやまんばはよく出て来る。共通するのは、姿は恐ろしいが心は優しいというところだ。 山の神様も女性だと言われている。自然の恵みに満ちた日本の山や海は、「やまふところ」という言葉が示すように、昔から母なる存在で、やまんばはその象徴的な表象なのだろう。この物語は哀しい結末へ向かって進んでいくが、中心軸は昔話のやまんば像に沿っている。心ならずも山で暮らす山妣。我が子をいとおしむ心が胸に迫る。唐突ですがウルトラマンに出てくるウーも山妣ですね。2013/10/15
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- 和書
- 幻夜 集英社文庫