内容説明
詐欺事件を種に不動産屋を強請り、長崎から流れつきバーBergmanのママをつとめる蠱惑的な妻カヨ子を奪いとった地廻りのヤクザ、春駒組若頭の峯尾。彼はさらにカヨ子を使って町役場出納室長の梶に公金横領を唆す。折しも山一抗争の拡大で全国で血みどろの戦いが展開する中、峯尾に組長暗殺のヒットマンという大役が命ぜられる。バブル期の紀州を舞台にエロスと欲望が突き抜ける犯罪巨編!
著者等紹介
辻原登[ツジハラノボル]
1945(昭和20)年和歌県生れ。’90(平成2)年「村の名前」で芥川賞、’99年『翔べ麒麟』で読売文学賞、2000年『遊動亭円木』で谷崎潤一郎賞、’05年『枯葉の中の青い炎』で川端康成文学賞、’11年『闇の奥』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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NAO
54
ヤクザの内縁の妻であるバーのママが仕掛けた罠にはめられた和歌山県の町役場の出納室長の公金横領と、内部分裂した山口組と一和会の全面抗争。ヤクザに目をつけられてしまった出納室長の転落は、どうしようもないものだったのか。関西空港が作られ、バブルにわいていた和歌山。その裏側の闇。大きな金が動くときには、その裏側も大きく動いている。悪い方に悪い方に。そんな流れに巻き込まれてしまった人は、不幸としかいいようがない。2023/08/01
JKD
16
お互い人に言えない秘密を抱えたカヨ子と梶と紙谷。一方3人すべての秘密に関わり、利用しようとする暴力団の峯尾。和歌山を舞台に騙す側と騙される側両方の視点で話が進んでいく。山一抗争の渦中でヒットマンとして役目を果たし、海外逃亡を企てる峯尾とその作戦を逆手に利用しようとする紙谷との騙し合いが巧妙であり滑稽でもあった。時代背景でニノミヤムセンが出てきたのが何故か懐かしく笑ってしまった。2019/06/11
ケイジ
6
和歌山を舞台にした裏のかき合い、バイオレンス。ヤクザの抗争などに抵抗がなければ楽しめます。2019/06/11
オオイ
4
和歌山県の町役場収入役・不動産屋・ヤクザとそれぞれに関係している女が山一抗争事件に絡む出来事をうまく書いてある。2022/05/24
Hideo Itoh
3
山口組と一和会の血を血で洗う抗争を下敷きに、和歌山でのヤクザのシノギ合い、女に入れあげた公金横領、巨大公共事業をめぐる利権争いなど、「欲」にまみれた人間たちの生き様をリアルに描いた犯罪小説。読んだからといって、市井の凡人には役立つことはなにもないけど、妙に引き込まれる話だった。昭和生まれだからかなぁ。 2019/06/29