内容説明
検事を辞め、弁護士へと転ずる者たち―正義を守るため、巨悪を攻めていたはずの人間が、なぜ退官後には一転して裏社会の守護者となるのか。彼らが弁護に回った数々の汚職事件、そして彼ら自身が被告となった事件などを追いながら、「司法界の談合請負人」とも呼ぶべき「ヤメ検」たちの生態と素顔に迫る。厚いベールに包まれていた司法の闇に斬り込んだ傑作ルポルタージュ作品。
目次
第1章 バブルの罠―朝鮮総聯本部ビル詐欺事件1
第2章 顧問弁護士―防衛事務次官汚職事件
第3章 関西検察―和歌山県官製談合事件
第4章 制度疲労―福島県知事汚職事件
第5章 挫折、その後―東京高検検事長スキャンダル
第6章 つぶれた捜査―吉本興業内紛事件
第7章 審判―朝鮮総聯本部ビル詐欺事件2
第8章 弁護士失格―元特捜検事・田中森一の述懐
著者等紹介
森功[モリイサオ]
1961(昭和36)年、福岡県生れ。岡山大学文学部卒。「週刊新潮」編集部などを経て、2003(平成15)年にフリーランスのノンフィクション作家へ転進した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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団塊シニア
16
検事から弁護士に転身、正義を守るための人間が一転、裏のネットワークに捕えられる様が克明に描かれてる。なぜ危ない橋を渡るのか?という疑問が残る一冊である。2012/09/30
ichiro-k
9
「狐と狸の化かし合い」という内容。最終章だけで十分。全体にクドイ。古今東西、穿りかえせばよくある話。口角泡を飛ばして訴えることか?「晩節を汚す」ことに手を染めた「老い先短い」人達は、この期におよんでいったい何を求めたのか?金?名誉?虚栄心?それとも人間の「業?性?」2011/09/27
Ikuto Nagura
6
国民の負担によって築かれた人脈や影響力を利欲のために用いることは、どこまで許されるのか。構図としては、他省庁の高級官僚の天下りと同じだ。だけど、他の天下り以上に不公平さやイリーガルさを感じるのは、検察官を正義だと盲信してるからだろうし、利用する奴らの疾しさをより感じちゃうからだろう。とはいえ、刑事裁判という狭い業界(?)でパイを分け合わねばならないヤメ検たちが退官後に儲けるのは、思ったより大変そう。運良く儲けられても、金や女の「誘惑に負けない胆力」がないと、身を崩してしまう。そう言った田中森一でさえも…。2016/01/25
Ted
4
'08年9月刊。△ヤメ検の生態と実態を描いたルポ。長く権力の側にいた人間というのは世間知らずで人情の機微に疎く、退官後もその感覚が抜けないので世故に長けた胡散臭い連中や反社会的勢力に絡め取られるのではないかと著者は言うが、概ねその通りだろうと思う。 2018/05/17
MTK
4
面白い。普段から読ませようとする人でも新聞記事と違って雑誌記者の書き方は人を楽しませようという姿勢が感じられる。ヤメ検ってのは検察を退官した弁護士で、中でも緒方元公安調査庁長官がすごい。面白いように利用されてる。先日話題になった朝鮮総連ビルの件で、詐欺罪で起訴されたんだけど中身が笑える。ドラえもんでいうとジャイアン(検察)がのび太(緒方)とスネ夫(総連)のケンカを仲裁しに行くも、着いた時には既に仲直りしてて振り上げた拳の降ろし場所がないからって、のび太を殴る(起訴)って筋。そりゃねえだろ2013/05/01