内容説明
町外れに暮らすひとりの老人をぼくらは「観察」し始めた。生ける屍のような老人が死ぬ瞬間をこの目で見るために。夏休みを迎え、ぼくらの好奇心は日ごと高まるけれど、不思議と老人は元気になっていくようだ―。いつしか少年たちの「観察」は、老人との深い交流へと姿を変え始めていたのだが…。喪われ逝くものと、決して失われぬものとに触れた少年たちを描く清新な物語。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
1027
過ぎ去った遠い、あの夏休みを思い出すような物語。男の子たちにとって、小学校6年生の夏休みは、特別なものであるのかもしれない。それ以前と、それ以降とは画然と違っているからだ。この物語に描かれた3人の少年たちにとっては、それがとりわけ大きな転換点になったのだった。ロマネスクな経験をしたわけでも、冒険に乗り出したりしたわけでもない。たった一人の老人に邂逅しただけである。しかし、そこから物語は死の問題、老いの問題、核家族の問題などと展開してゆく。いっぱいに開かれた感受性。青春の前の一瞬にだけ持ち得るのがそれだ。2014/12/25
馨
664
おじいさんは最期に3人の少年と出会って人生輝いたでしょうね。 最初の目的はどうあれおじいさんと心を通わせていくうちに3人が自分なりに死について考え成長していく姿がよかった。コスモスを庭に蒔くシーンも素敵です。私も10年前に祖父が亡くなった時に少なからず3人のような気持ちになっていたと思います。あの世にも知り合いがいるって心強い、私もそう思って頑張っていこうと思えました。2013/01/14
HIRO1970
631
⭐️⭐️⭐️子供の本棚から借りました。中1の時の課題図書だった様です。実に爽やかなお話で表面的には人畜無害な感じのお話ですが、少年時代にしか出逢えないようなトワイライトゾーン『黄昏時』みたいな得難い時空間を感じる事が出来るなかなか深い作品で特に心がガサガサしてきた若い方々にオススメ出来る作品だと思います。たまにはピュアな気持ちになるのも良いもんです。2014/12/09
zero1
498
死ぬとはどういうことか?息をしない?二度と会えない?死んだ人を見たいという好奇心から小6の「ぼく」(木山)、魚屋の息子でデブの山下、すぐキレる河辺の三人が夏休みの間、老人を見張ることに。ある意味、日本版「スタンド・バイ・ミー」といえる。ところが彼らの尾行は老人にバレバレ。三人はこの夏に起きたことを忘れないだろう。死を描くことで生きている奇跡が浮き彫りになっている。久しぶりに再読してみて、読書とは読者が毎回生まれ変わることだと再確認した。想像力があれば、経験したことがなくても人は別の人生を知ることができる。2018/12/07
yoshida
492
初夏に入り小六の木山、河辺、山下の三人は、ひっそりと暮らすお爺さんの観察を始める。動機は人の死の瞬間が見たいため。気がつけば彼らはお爺さんと仲良くなる。少年達のお爺さんとの一夏の交流での成長。捨て鉢に感じたお爺さんの生活も少年達との交流により、改善される。雑草を抜いたお爺さんの庭にコスモスを植える。スイカと花火に夏の日を思い出す。友人が侮辱された時に立ち向かう勇気。貴重な夏の日が過ぎて行く。唐突に訪れるお爺さんの死。そして旅立ち。素敵な言葉がある。中学生位で読むと未来への考えに良い影響があると思う良書。2016/06/12