出版社内容情報
中学を出て、その日暮らしを三年半。十代も終わりに近づいてきた北町貫多は、心機一転、再出発を期し、横浜桜木町に移り住み、これまでの日雇いとは異なる造園会社での仕事をはじめた。三週目に入って、事務のアルバイトとして貫多と同い年の女の子がやってきた。寝酒と読書と自慰の他に特に楽しみのなかった貫多に心を震わせる存在が現れたのだった。著者初の幻の傑作長編、ついに文庫化。
内容説明
中学を出て、その日暮らしを三年半。十代も終わりに近づいてきた北町貫多は、心機一転、再出発を期し、横浜桜木町に移り住み、これまでの日雇いとは異なる造園会社での仕事をはじめた。三週目に入って、事務のアルバイトとして貫多と同い年の女の子がやってきた。寝酒と読書と自慰の他に特に楽しみのなかった貫多に心を震わせる存在が現れたのだった。著者初の幻の傑作長編、ついに文庫化。
著者等紹介
西村賢太[ニシムラケンタ]
1967‐2022。東京都生れ。中卒。2007(平成19)年『暗渠の宿』で野間文芸新人賞、’11年「苦役列車」で芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
こうすけ
29
北町貫多の長編もの。珍しい。師匠・藤澤清造ではなく、田中英光との出会いが描かれる。しかし、好きな作家に出会った感動の裏側で、職場の女性事務員に惚れ込み、これでもかと醜態をさらすいつもの貫多が見られる。こうすればモテる、という狙いの見当違いっぷりが面白い。ローンウルフってなに。横浜でも暴れ、撃沈する貫多。2022/07/31
桜もち 太郎
23
何故か定期的に読みたくなる西村寛太が描く北町貫多。今回初挑戦、長編の私小説だ。相変わらずのクズの頂点を行く貫多。しかし「今までの自身の生活を根本から立て直す」という目標を持ち、横浜の造園業にアルバイトとして働くことに。そこで出会った新しく入った女の事務員に恋をする。自意識過剰、自称高等遊民、プライドばかり高く気が小さいと自認する貫多は恋の成就のために働き続ける。が、決定的な破滅に自信を追い込んでしまう。何と間抜けなんだろう、アホなのか。とこトンというやつだ。でも憎めないんだよなぁ。→2025/09/05
駄目男
23
彼の本を読んでいて不思議に思うことがある。中卒、不登校、家庭内暴力、学歴がないのをコンプレックスと自ら頭が悪いといいつつ、芥川賞作家になれるものなのだろうか。いや、学歴詐称などと言っているのではない。それらの悩みを解消し小説家になるには、ただひたすら読書に励むしか手があるまい。得られる知識、鑑賞力に感性、集中力などが、本人も気づかぬうちに優れた才能を発揮したということだろうか。事実、彼の文章にはとんでもなく難しい漢字が現れる。この「やまいだれ」という漢字からして読めない。私などが思うに読書量が2024/04/24
澤水月
20
少年期から横溝正史、大藪春彦、西村寿行など愛好していたと貫多の小説出自明かされ、それら大衆向けミステリやバイオレンス小説への敬意がいつもの貫多構文に混じり爆笑。極めてハニー、根が眠れるジゴロ、根が眠れるスケコマシ、狐狼と綿羊…。青春の甘さと苦さに真っ向から取り組む中で「私小説」を田中英光で知り天啓受け古本の世界にも足踏み入れる経緯が自然に織り込まれ感動。難しい漢字使わず、カタカナの笑い所満載、非常に読みやすい。西村賢太没後1年の祥月命日に。もっと読みたかった…。解説が映画苦役列車を著者に酷評された山下監督2023/02/05
ミサ
19
性犯罪者の息子で中卒。甘ちゃんで僻み根性が抜けずにどこで働いても投げ出してしまう19歳の貫多。オチが分かってるのに毎回「いいぞ!貫多!その調子!」って応援してしまう。今回は造園会社に馴染んで機嫌よく働いてるのよ。好きな女の子もできるし。ハッピーエンドなわけがないのに期待してしまった!!2022/08/03