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或る活字中毒者?の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
230
「河童が覗いた」シリーズの第1作。舞台美術家の妹尾河童さんが1年間かけてヨーロッパを歩き回った記録。文字も絵もすべて手描きというのが何よりも味わいを与えている。絵の数からは、彼の一番の関心は、それぞれの街のホテルの部屋にあるかのようにも見えるが、これはそれを各地の物価と、ある種の文化の指標に据えているからだろう。古い本なので、値段そのものは変わっているだろうが、指標としての有効性はまだありそうだ。それにしても、ホテルだけでもヨーロッパの風情を存分に伝えている。写真よりも一層体感的な温もりを持つて。2014/10/31
ねこ
122
凄いエネルギーを感じる書籍。50年以上前に書かれた本で著者が貧乏旅行した宿の見取図が手書きできめ細かく描いてあり文章まで全て手書き。当時は1ドル360円で海外旅行をする日本人は少なかったでしょう。一泊300円から3000円くらいまでで泊まり、屋根裏部屋などもよくあります。凄いなぁ。文化の違いやホテルの構造、備品などを通して考察する探究心も楽しい。文化庁からの研修旅行なのでメインはオペラ、バレエ、演劇を堪能したと思いますがホント凄い方ですねー。絵で描かれているととても親しみを感じて何度も見直したくなります。2025/02/07
♪みどりpiyopiyo♪
73
子供の頃、大叔母の旅の話を聞くのが大好きでした。北国の洋館に暮らすその人は、教師だったので 長期の休みには旅に出て 異国のあちこちを訪ね歩いたそうです。日本人の海外渡航が自由でなかった頃の話なども聞かせてくれて、御伽のようなお話を夢見心地で聞いていました。■この本のシリーズは、高校の英語の先生が教えてくれたの。初めて見た時は、ほんとびっくりしたなぁ♪ その後 古書店で見つけて購入し、今でも時々眺めてにんまりしてます。(初出 1976(昭和51)年)(→続2019/12/30
ジュール リブレ
64
何年ぶりかの再読。手書きの文字、手書きの精緻なイラストに改めて感動。今は遠くなってしまったヨーロッパを、もっと遠かった時代に、安宿に泊まって巡り歩いた妹尾河童さんの愛情あふれる一冊。ミラノの神父からのコメント「その人たちの行為があるからと言って、多くの人たちから喜びを奪うことは正しいとは思えない(一部略)日本では考えられないことばかりだ」。そう、この考えられないことに会いに旅に出る。その楽しさを、また味わいたいものだ。2020/05/13
HIRO1970
60
⭐️⭐️⭐️ぱっと見よりも実に情報量が多い本で、かなり時間を掛けてジックリと楽しみながら読み進めました。完全な鳥瞰図《俯瞰図》よりもやや立体的に描かれた物の方が物質と空間の広がりが掴みやすく、すんなり理解出来ました。陸続きの国でも服装や風俗から家具調度の違いやビデの有無、暖房器具や窓枠に門構えに屋根のかたちの違い、城マニア《建築マニア?》とも思える膨大な建築物の絵。かかったコストも載っているので20世紀の博覧会の様な本です。数百年後には考証学としても価値が出る本かも知れません。眺めるだけでもオススメです。2015/05/09