内容説明
夫を捨てて、突如出奔した母・絹子。「ドナウ河に沿って旅をしたい」という母からの手紙を受け取った麻沙子は、かつて五年の歳月を過ごした西ドイツへと飛ぶ。その思い出の地で、彼女は母が若い男と一緒であることを知った。再会したドイツの青年・シギィと共に、麻沙子は二人を追うのだが…。東西ヨーロッパを横切るドナウの流れに沿って、母と娘それぞれの愛と再生の旅が始まる。
著者等紹介
宮本輝[ミヤモトテル]
1947(昭和22)年、兵庫県神戸市生れ。追手門学院大学文学部卒業。広告代理店勤務等を経て、’77年「泥の河」で太宰治賞を、翌年「螢川」で芥川賞を受賞。その後、結核のため二年ほどの療養生活を送るが、回復後、旺盛な執筆活動をすすめる。『優駿』(吉川英治文学賞)『約束の冬』(芸術選奨文部科学大臣賞)『骸骨ビルの庭』(司馬遼太郎賞)等著書多数。2010年、紫綬褒章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mariya926
122
錦繍と彗星物語がとても良かったのと、恋愛がテーマになっているとのことで借りてみました。母親が旅行に行くと出かけますが、後の手紙でドナウ川沿いの旅行をしているので探さないで欲しいとのことです。娘の麻紗子は探しにドイツに行きますが、昔付き合っていた元彼と出会い誤解を解き愛が再燃します。母親は33歳の青年と旅行していますが、その青年が死のうとしていることを知り…。元彼のシギィも魅力的だけどペーターという友人も人間的に素敵です。ドイツでは友人が困っているとお金を貸してあげたり、人探しをしてあげたり魅力的ですね。2019/03/04
KAZOO
101
他のかたも書いておられますが、NHKラジオの新日曜名作座でまた再放送されたので何年かぶりの再読です。父親が退職したのを機に母親が家を出ていってドイツに行ってしまいます。主人公の女性は追いかけてフランクフルトからその後を追います。私にはやはりなつかしく昔行ったビュルツブルグ、レーゲンスブルグ、パッサウなどが出てきます。それにしてもこの母親の考えにはついていけません。2025/05/14
あつひめ
97
異国の地で繰り広げる母と娘、母と年下男、娘と外国人の恋人の珍道中のように見えてしまうのは私だけか。婿入りした夫の永年の暴力…夫婦のあり方を訴える重たい内容ではあるのに、このドナウの河を見ながら旅行する意味があるんだろうか…。似た者母と娘の心の葛藤。たくさんの人を巻き込んでいったい、どこまでこの芝居のような心に踏み込まない関係を続けて行くんだ?と少し、展開してほしくてもやもやしてしまった。男と女の関係なんて他人でもましてや親子でも口出しできない不思議な関係で成り立ってあるんだろうな。さて、続きが気になる。2013/09/03
あん
80
今年最後に読了した作品です。発売は1988年。最初に手にしたのは学生時代、今回で何度目の再読だろう。私が宮本輝を読み始めるきっかけになった愛読書です。旅は旧西ドイツに始まりオーストリア、ハンガリーを横切り最後にルーマニアの最果ての町にたどり着く。社会主義国に生きる人々の生活や風土が丁寧に描かれていて、情景が目に浮かぶ作品です。いつかドナウ川が黒海に注ぐまでを旅したいと胸に抱き、ドイツを訪れドナウ川と対面した時の感動は今でも忘れられません。2016/12/31
i-miya
71
2013.12.04(12/03)(初読)宮本輝著。 12/03 (カバー) 絹子は娘麻沙子の説得を聞かず、ドナウの終点、黒海までいくという。 絹子は母の若い愛人長瀬との旅の目的に不安。 麻沙子とシギィは同行することにした。 東西3000km、ドナウの流れに沿った二組の旅は続く。 別れと出会い。 母娘、それぞれの愛。 (解説=赤松大麓) 初の新聞小説。 2013/12/04