内容説明
仕事も人間関係もうまくいかず、毎日辛くて息が詰りそう。23歳の千鶴は、会社を辞めて死ぬつもりだった。辿り着いた山奥の民宿で、睡眠薬を飲むのだが、死に切れなかった。自殺を諦めた彼女は、民宿の田村さんの大雑把な優しさに癒されていく。大らかな村人や大自然に囲まれた充足した日々。だが、千鶴は気づいてしまう、自分の居場所がここにないことに。心にしみる清爽な旅立ちの物語。
著者等紹介
瀬尾まいこ[セオマイコ]
1974(昭和49)年、大阪府生れ。大谷女子大学国文科卒。2001(平成13)年、「卵の緒」で坊っちゃん文学賞大賞を受賞し、翌年、単行本『卵の緒』で作家デビュー。’05年、『幸福な食卓』で吉川英治文学新人賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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zero1
596
自殺願望がある方は、どうかこの本を読んでほしい。死ぬのを先に延ばすかもしれない。千鶴は保険の営業だったがノルマを果たせず人間関係にも疲れていた。退職願を出し北に向かう列車に乗った。さらに山深い地域に行き、寂れた民宿に泊まる。睡眠薬を飲むのだが・・・瀬尾の作品世界だけあって牧歌的。それでも、ご飯の甘さを知らずに死ぬのはもったいない。こんな民宿、現実にないことは誰でも知っている。それでもこうした作品が誰かの救いになればいいと思う。田村はどこかにいる。この文章を読んでいるあなた!大丈夫?心が疲れてない?2018/10/28
さてさて
585
『死んだらあかんで。生きてたらええことあるわ』と民宿の主人が千鶴に投げかけてくれたこの言葉。『きっかけさえあれば、気持ちも身体もいとも簡単に変化する』という私たちの人生。その時、その瞬間がどんなに辛くても、死ぬしかないと思えても、きっかけさえあればそんな気持ちも一瞬にして過去のものになってしまう私たちの人生。「天国はまだ遠く」、そう、まだまだやりたいことがある。まだまだ読みたい本も沢山ある。天国になんてまだまだ行く時じゃない。きっかけなんて何だって構わない。読後、気持ちがスッと楽になったそんな作品でした。2021/07/04
青乃108号
569
タイトルと装丁画で内容がわかってしまう本。まさかそんな、と思ったらその通りだったのでびっくりした。23歳女性が北の果てまで死にに行って、民宿に泊まって、その日の夜に睡眠薬をのんで自殺を図る。しかしなまじな睡眠薬では死ねやしない、まるまる1日眠り、爽やかな朝を迎えてしまう。その後、民宿の田村さんと過ごした21日。何もしなかった彼女だけど、人間、疲れたり嫌になったり逃げたくなったら、兎に角何もしないで休む事が大事だな。そのうち必ず何かを始めたくなるから。また元気も湧いてくるから。なかなか深い本だった。2024/02/01
HIRO1970
531
⭐️⭐️⭐️瀬尾さんはまだ2冊目ですが、何とも言えずいいお話で物凄い田舎の話なので、これは神去なあなあのオンナ版のようなお話でした。人間は弱い者でもあり、同時に強い者でもある。当たり前の事が見えなくなったり、突然見えてきたりする。人間の精神や神経は簡単に自縛的に麻痺し絶望に囚われるけど、自縛的な自己暗示だけにほんのチョットしたきっかけで鬱状態から躁状態に切り替わり何もかもが楽しくなったりする。瀬尾さんのお話はチョット弱って臆病になって自信を無くしているような人にはグッドメディスンになると思います。2015/06/19
yoshida
408
仕事や人間関係に追い詰められ、遂に死を決意した千鶴。彼女が目指した北の果て、恐らく丹後の地の「民宿たむら」で自殺を図る。自殺に失敗した千鶴は、民宿の主人の田村の不器用な優しさや、豊かな自然、ゆったりとした時間に少しずつ回復してゆく。千鶴が様々なことに傷つき、ダメージを負っていく様子が生々しく、痛いほど伝わった。何故か上手くいかない時は続くのだ。この土地での休息により千鶴は少しずつ回復する。そして気が付く。ここから旅立ち自分の場所を作らねばいけないことに。21日間の再生と旅立ちの物語。ほっとする読後感です。2017/09/10




