内容説明
『沈黙の春』が自然破壊の恐怖に警鐘を鳴らしてから半世紀近く。地球環境は想像以上の速さで悪化している。土壌劣化、温暖化、食糧危機、化学物質の影響、エネルギー問題。この5つの難問の抜本的解決策とは。原因不明の難病と闘いつつも、科学ジャーナリストとしての「いのち」と人間の問題を誠実に見つめ続ける著者が、柔らかな言葉としなやかな感性で次代に残す環境問題入門書の決定版。
目次
1 土壌(地球ができたころ;生命の誕生 ほか)
2 大気(地球の成り立ち;オゾン層とフロンガス;地球温暖化)
3 食糧危機(有機農法;世界の農業事情;日本の農業の問題;遺伝子組換え作物)
4 化学物質(輸入食品とポストハーベスト農薬;鍋のなかの毒;汚れを落とす仕組み;プラスティックと塩化ビニル;ダイオキシンと内分泌撹乱物質)
5 エネルギー(原子力発電;太陽と風と…)
著者等紹介
柳澤桂子[ヤナギサワケイコ]
1938(昭和13)年、東京生れ。お茶の水女子大学を卒業後、分子生物学勃興期にコロンビア大学大学院を修了、慶應義塾大学医学部助手を経て、三菱化成生命科学研究所の主任研究員として活躍中に、激しい痛みとしびれを伴う原因不明の病に倒れる。以後30年以上を闘病しながら、医療問題や生命科学に関する執筆活動を行っている。著書・受賞多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アナクマ
32
生命科学者の環境エッセイ。04年。◉エネルギーの章。原発を憂い再エネに言及。当時日本は太陽光先進国。バイオマスや欧米の風力にも言及。「皆が質素に暮らすこと…以外に、地球を救う方法はない」とは素朴に過ぎますが「樹木のイルミネーション…そんなことに電気を使うほど私たちはエネルギーに恵まれているのでしょうか」というのもまた真っ当。◉「太陽の恵みだけで生きていくことができたら、どんなに素晴らしいでしょう」同感。「あきらめずに知恵をしぼっていかなければなりません」同感。しかし揚げ足をとりたいわけではありませんが、→2022/12/23
モリー
30
「沈黙の春」が読み継がれているように、この本も読み継がれてほしい。地球に生きる私たち人間とはどういう存在であるのかを確認することから本書は書き起こされています。そのため前半は、地球誕生から、生命が生まれ、そして人類が誕生してから現在に至るまでの歴史をかなりの紙幅を割いて説明しています。つまるところ環境問題とは、生態系の物資循環の破壊の問題なのだと気付かされました。また、深読みしすぎかもしれませんが、人間を含む“全ての生命”がともに生きる地球を大切にしようというメッセージが込められているのではと感じました。2018/12/02
まさ
13
自然とは何か、人為とは何か考えさせられます。土壌、大気に始まり、食糧危機、化学物質、エネルギーへとわかりやすい説明で伝わってきました。柳澤桂子さんの「勉強ノートのような本」とのことですが、参照文献も豊富で読み広げたくなります。一方で、2004年1月出版ですので、その後の柳澤さんの考えや思いをお聞きしたくなりました。2018/12/11
Gotoran
11
生命科学者が、マクロ的かつ壮大なスケールで、“母なる大地”即ち地球の環境破壊の現況とその抜本的解決策を問いかける。数多くの文献を精査し、土壌汚染、大気汚染(温暖化)、食糧問題、化学物質の悪影響、エネルギ問題について、具体的にわかり易く解説してくれる。食糧問題ではアメリカの国益追求一辺倒のエゴ、エネルギ問題では脱原発、自然エネルギへのシフトを訴えている。著者の思いが伝わってくる、”母なる大地”を後世に引き継ぐためには、現代に生きる各人が我欲を排除し少欲知足・清貧の思想をもって生きていくべきであると。2011/12/03
佐島楓
10
拙作「ガラスの教室」を出版したとき、帯に文を寄せていただき大変お世話になりました。日本版「沈黙の春」という表現がぴったりで、あたたかい中にも鋭い視点で自然破壊の恐ろしさを訴えていらっしゃいます。放射能汚染についての記述と、TPPにつながる農業政策の問題も論じていらっしゃるので、興味のあるかたは是非お読みいただきたいです。柳澤先生には改めてこの場をお借りしてお礼申し上げます。ありがとうございました。2011/11/20