内容説明
大学を卒業し、編集プロダクションに就職したなつみ。生き馬の目を抜く世界で、女性が働くことの厳しさを知り始めた矢先、プロダクションが倒産、失業したなつみは、持統女帝の生き方に魅せられて、再び吉野へと旅立った。遺跡発掘に精出す充実した日々に、彼女がほのかな恋心を抱く中年男性、泉が現れる…。万葉びとの華麗な生きざまに現代女性の自立への道を探る、長編ロマン。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
背番号10@せばてん。
30
1993年10月28日読了。おじさんだって、たまにはこういう本を。(2022年4月20日入力)1993/10/28
紅香
26
歴史書は心情を書いていない。家系図や場所等から肉付けしていく作業は心が踊ることだろう。もはや暗号のピース。謎が好奇心を掻き立てる。。歴史に触れるたび、なつみ同様男女の『愛』について考える。そんな言葉は今になっても誰も言葉にして説明できない幻のようなものだとなつみと語りたい。ずっと愛せるものはいつも心を動かす残された遺跡や絵画、心情の欠片なんだと。。奈良へ行きたくなる。それまで様々な本を読んで視野をもっと広げたい。『万葉集』にも興味が湧いた。奈良の地で諳んじることができたらもっと近しくなれるかなと心が弾む。2021/01/30
ゆきおんな
17
この本が出た頃を思うと、今は女性が生きやすい時代になったと感じました。もっと前の時代の女性達を想いながら、自立への道を模索する主人公に共感を覚えます。あまりにもお嬢様すぎて、う~ん…と思うところもありますが、なかなか根性もあって本当に素敵な女性です。こんな女性、今の時代に見つけるのは少々困難だなぁと思います。持統天皇の心に迫りながら、自分の心の声にもきちんと耳を傾けて目をそらさない。難しいことだけれど、そうありたいと思う理想像でした。
shimashimaon
7
30年前、学生の頃に読んだ時の感想は「カンボジア和平とか湾岸戦争とか国際関係で日本が果たす役割が増えているけど、古代においても国際関係は重要事だったんだ」というものでした。古事記にはアメノヒボコという朝鮮半島ルーツの神が土着する話もあるので、30年前は知らなさ過ぎたんだなと思います。万葉集も日本書記も手に取ることはありませんでした。主人公のように明日香にも行きましたが、飛鳥資料館なる国立の施設があることを知りませんでした。主人公のように「現代につながってこそ歴史」を実感する経験を重ねていきたいと思います。2023/03/09
sweet november
6
この小説が書かれた時代と違って、今は女性が働き続けるのが当たり前という世の中になった。今で言うブラック企業での就業中のなつみの待遇は目に余るものがあった。 自分の好きなことを仕事にする難しさはいつの時代も変わらないかも。2024/02/22