出版社内容情報
平野 啓一郎[ヒラノ ケイイチロウ]
著・文・その他
内容説明
地方都市で妻子と平凡な暮らしを送るサラリーマン沢野良介は、東京に住むエリート公務員の兄・崇と、自分の人生への違和感をネットの匿名日記に残していた。一方、いじめに苦しむ中学生・北崎友哉は、殺人の夢想を孤独に膨らませていた。ある日、良介は忽然と姿を消した。無関係だった二つの人生に、何かが起こっている。許されぬ罪を巡り息づまる物語が幕を開く。衝撃の長編小説。
著者等紹介
平野啓一郎[ヒラノケイイチロウ]
1975(昭和50)年、愛知県生れ。京都大学法学部卒。’99(平成11)年、大学在学中に文芸誌「新潮」に投稿した『日蝕』により芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
bunmei
120
一言でいうと、哲学的なサイコ・サスペンスといった感じ。平野流の文学的な言葉の中に、ヒタヒタと迫る猟奇的な怖さが迫ってきます。いつの間にか結婚し、平凡な生活を送っていることに、不条理な疑念を持つようになっていた良介。それは、兄の崇が秀才であるにもかかわらず、屈した世界観を持ち、人生に失望しかけていることと、妻・佳枝と崇との関係にも、疑惑を感じ始めていたから。その良介が、無惨な殺人事件の被害者となって発見され、容疑者として浮上したのが兄の崇。また同時進行のいじめ事件の復讐劇も絡み、サスペンスの色濃く下巻へ。 2019/11/07
s-kozy
72
存在の確かさ、不確かさ。目の前にいれば、その人は確かにいるのか?ネットの闇に真実はあるのか?突然起きたバラバラ遺体遺棄事件。いや、この殺人は必然か?「これはすごい小説なんじゃないの?」と予感を孕ませつつ下巻へ。2016/08/31
NAO
68
ネットで殺人依頼がなされたり、集団自殺が行われたりする現代、あまりにも倫理観が希薄になって、他人の感情が読めなくなってしまった時代に、こういうことも起こりうると警告を発しているような話。ブラックホールを覗き込んだら、こんな感じなのだろうかと思うような暗さ、重さの中、下巻へ。 2022/07/16
優希
63
罪の重さの匂いがします。息の詰まるような事件の序章と言うべきでしょうか。無関係に見える2つの人生が関わりを持つことで、明らかに何かが起こっているように感じました。何か分からない苦しさなのですが、そこに引き込まれずにはいられません。下巻も読みます。2021/08/19
かみぶくろ
54
4.4/5.0 大昔に読んで衝撃を受けた作品ですが、いま読んでも絶望的な気分が甦る傑作ですね。読んでて息苦しくなるほどに、起こる出来事が辛すぎるし、そこに至る筆も達者すぎて辛すぎる。相変わらず文章の精密さや表現力がずば抜けていて全編読み応えありますが、主人公の頭良すぎるゆえの虚無と、彼に語らせるイラク派兵直前のアメリカ論が作品テーマの善悪と絡み合っていて興味深い。下巻もきっと辛いことばかり起こるんだろうなあ。2024/10/21