内容説明
縄文人と弥生人、反目から共存への図式。「あいだ」の表現としての歌。城壁なき律令国家の誕生。仏教変容の宇宙的規模。「近代の超克」は、更なる超克へ…。極東のこの島国で連綿と演じられてきた精神のドラマ。その独自性と真価を、広く世界をも見すえつつ徹底検証する。常に時代と切りむすんできた三知性が集い、火花を散らした全記録。五つの鼎談が今、価値大転換期の混迷を照らす。
目次
1 日本人の「思想」の土台(「日本思想」という言葉の意味;ヘーゲル的な国家観への抵抗 ほか)
2 日本人の「思想」の形成(ギリシャ思想と日本思想のはじまり;行基の重要な役割 ほか)
3 歌と物語による「思想」(和歌の発生について;『古事記』は歌物語 ほか)
4 地下水脈からの日本宗教(「毛坊主」の系譜;親鸞は聖徳太子の生まれ変わりか ほか)
5 「近代の超克」から「現代の超克」へ(京都学派による哲学の誕生;「近代の超克」の影響力 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まさ
9
このお三方、おもしろすぎます、というと大変失礼か。1つの言葉の裏にそれぞれの大きな世界が溢れています。「思想」をそれぞれの考え方で形作っているのだけど、日本という地域の歴史を多いに学ぶことができます。2018/07/29
イリエ
6
濃いぃ~一冊でした。何より、梅原先生の存在感がすごい。歌物語とはなんだったのか。どうして西洋と東洋の宗教から個人主義的な差が生まれるか。それは、小麦と稲作の栽培方法が違うから!? どうしてインドに仏教は根付かなかった? などなど、もうこれは凄い一冊です。吉本隆明さんは原発問題も話していて、原発よりも有効で安全だという謳い文句で登場する技術が開発されたとすれば、それは必ず自然を破壊するものだという指摘も印象的でした。2017/02/13
すずき
5
むっちゃ時間かかってしまった。あとがきで中沢新一が次があるといいな〜みたいな匂わせ発言をしているが続編はないのが悲しい。それにしても梅原中沢両氏がよく喋る。全体的に吉本の発言量は少ないが、的確にポイントをさらっていく感じ。タイトルの議論が顕在して継続する訳では無い。一応結論としては日本の思想というのは芸術表現や宗教思想に具体として表出していて体系的ではないというのが序盤に出ているが、うーん個々の議論はまあまあわかるが全体としてわかるようになるのは何年先か…要約しがたい。和歌論は私的に大変勉強になった。2020/02/28
ダージリン
5
顔ぶれが豪華な何とも贅沢な対談集。内容も刺激的。日本は思想自体を体系的に構築するのではなく、茶や能などの中で、思想を具体性と結びつける形で展開してきたという吉本氏の指摘はなるほどと思った。古事記を歌物語と見るという梅原氏の見方も面白い。縄文とかアイヌとか原日本的な匂いがするものは興味深く、もう少し学んでみたい気がする。2018/05/13
山中タカ
4
「魂鎮め」の問題について触れた箇所が示唆に富んでいた。2017/11/04