出版社内容情報
吉田 修一[ヨシダ シュウイチ]
著・文・その他
内容説明
風呂上りの火照った肌に鮮やかな刺青を躍らせた猛々しい男たちが、下穿き一つで集い、日々酒盛りに明け暮れる三村の家。人面獣心の荒くれどもの棲む大家族に育った幼い駿は、ある日、若い衆が女たちを連れ込んでは淫蕩にふける古びた離れの家の一隅に、幽霊がいるのに気づくのだった。湾の見える町に根を下ろす、昭和後期の地方侠家の栄光と没落のなかに、繊細な心の成長を追う力作長編。
著者等紹介
吉田修一[ヨシダシュウイチ]
1968(昭和43)年、長崎県生れ。法政大学経営学部卒業。’97(平成9)年「最後の息子」で文學界新人賞。2002年『パレード』で山本周五郎賞、同年発表の「パーク・ライフ」で芥川賞を受賞。ジャンルにとらわれない幅広い作風と、若者の心情をみずみずしく描き出す筆致の確かさに定評がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yoshida
159
父が亡くなり、長崎の母の実家の三村家に身を寄せる幼い駿と悠太。母屋と離れからなる母の実家。伯父は三人。上の二人はヤクザ。一番下の伯父は離れで自殺した。三村の家の栄枯盛衰が駿の成長と共に描かれる。伯父・文治を慕う多くのヤクザ者で溢れていた三村の家。文治を慕っていたはずの正吾が神戸で独立し、徐々に三村の家は衰えてゆく。吉田修一さんは長崎の出身であり、街の情景や交わされる言葉がとてもリアルだ。因習のある三村の家。家から離れたくても何故か離れられない駿。ラストの火災に三村の家を取り巻いてきた男達の悲哀を感じた。2017/09/07
mariya926
102
図書館から借りてきて読メに登録した時に人気がないなと驚きましたが、読んでみて最初の章で読むのを止めたくなりました。駿が戦後のヤクザの家庭環境で育ったらどうなってしまうんだろうと心配になりました。ただ私の長所というか短所というか、どんな本でも最後まで読んでみるの所があるので読みました。瞬が母を迎えに行ったからか結局家から出れずに、幼くヤクザの家の繁栄を全く知らなかった弟が東京に行く。最後の家の火事によって瞬が家の束縛から解放されることを願いました。それと末の弟の自殺の原因を知りたかったです。2018/10/03
papako
71
吉田修一作品、長崎、ヤクザときたので、喜久雄の影を求めて読んでみた。全然影も形もいなかったけど、吉田修一らしい人間造形ととりとめなく、断片的で、そこにはいない駿の人生。『何がどうなれば、駿のような男ができあがるのか』そんな物語でした。結局幽霊は何を象徴していたんだろう。2018/11/14
タツ フカガワ
63
造船所の事故で父親を亡くした駿は、母親千鶴の兄でヤクザ者の文治の家に世話になることに。背中に彫り物をした男たちが出入りするこの家には離れがあって、駿は7歳のとき、そこで幽霊の声を聞く。誰も信じなかったが、昔この離れで千鶴の弟が自殺したという。昭和の長崎を舞台に描かれるのは青春小説でも成長小説でも、もちろんホラーでもなく、行き場を見つけ(られ?)ない少年の姿で、それが妙にリアリティがあって読み始めたら一気に読了。とくにラスト数行の乾いた悲哀感漂う小説は好きです。2024/02/25
秋製
46
お気に入りさんが読んだというつぶを見て、興味を持った本です。内容的には読まないタイプの話でした。いつもなら途中でやめてしまうのに、読み易く感じていた所為か最後まで読めました。これは短編連作集です。二人兄弟の兄駿の視点で書かれていますが、最後は弟の悠太の視点で書かれています。 三村家の人たち、特に男たちは何故か解らないけど、この家に囚われている気がしたので、結末を読んで何処かほっとした気がしました。というのが一番印象に残った感想でした。2013/02/25
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