内容説明
大黒屋光太夫、土佐の長平、尾張の重吉―鎖国下の江戸時代に不慮の海難事故に遭って漂流しながら、旺盛な生命力で、奇跡の生還を果たした船乗りたちがいる。『ロビンソン・クルーソー』研究で知られる著者が、彼らの肉声をもとにした詳細な記録を読み解き、それら漂流譚から七人を選んで、江戸時代の漂流者たちの壮絶なサバイバル物語と異文化体験を紹介する。付・江戸時代漂流年表。
目次
はじめに―「海の論理」
序章 漂流の背景(「鎖国」の本質;太平洋長期漂流の発生)
第1章 無人島漂着編―鳥島サバイバル(志布志のロビンソンたち;新居のロビンソンたち;土佐のロビンソンたち―無人島長平)
第2章 異国漂着編(北方のガリバー―大黒屋光太夫のパフォーマンス;南方への漂流―大野村のガリバーたち;博多のロビンソン―唐泊孫太郎ボルネオ漂流記;尾張のオデュッセウス―船頭重吉の苦労と語り)
あとがき「頭で漂流、心でサバイバル」
江戸時代漂流年表
著者等紹介
岩尾龍太郎[イワオリュウタロウ]
1952(昭和27)年福岡県生れ。東京大学人文科学研究科博士課程修了。現在、西南学院大学国際文化学部教授。西南テレマン合奏団ならびに西南リコーダーアンサンブル世話人(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まんぼう
5
シンプルに漂流記をまとめたものかと思いきや、歴史的考察や当時の風習、古文書の引用、少々ワイルドな著者の私見など盛りだくさん。何作か読んだ漂流記もので理解しにくかった和船の構造や風習などの当時の事情をこの本で知ることができて非常に面白かった。17世紀ごろまでは日本も高度な遠洋航海術・造船技術があったが、鎖国政策によりその全てを破壊してしまう。しかし増える物流の為に海運は爆増、さらに帰還した漂民の話は極秘とされその知識は共有されなかった。技術も知識も共有されないとなるとそりゃ同じトラブル多発する。2025/05/25
たーくん
5
大黒屋光太夫、土佐の長平、尾張の重吉―鎖国下の江戸時代に不慮の海難事故に遭って漂流しながら、旺盛な生命力で、奇跡の生還を果たした船乗りたちがいる。『ロビンソン・クルーソー』研究で知られる著者が、彼らの肉声をもとにした詳細な記録を読み解き、それら漂流譚から七人を選んで、江戸時代の漂流者たちの壮絶なサバイバル物語と異文化体験を紹介する。付・江戸時代漂流年表。 2016/06/20
カツ
4
再読。幕末期の漂流を無人島に漂着するロビンソン型と異国に漂着するガリバー型に分ける著者。なるほど、なかなか巧い分析だと思う。さらにガリバー型は北方系と南方系にわけられる。それだったら暖かい南方がいいなと思いきや、南方は現地人に殺されたり奴隷にされたりとその上、帰国できてもキリスト教への厳しい取り調べが待っていた。・・・漂流はしたくないな。2019/03/14
takao
2
ふむ2023/07/09
nbhd
1
のけぞった。漂流記を小説にものした吉村昭に対して、クルーソー研究からはじめて本書執筆に至り、ついには漂流学を打ち立ててしまったのが岩尾龍太郎という人なのだろう…見上げた。日本における漂流記誕生の背景分析やロビンソン型/ガリバー型の分類など、その人文科学的功績はもとより、引用後にしばしば見られる「これは感動的である」といった著者の素直な感情表現に感動を覚えた。取り上げられている漂流記は、原典にあたって、ゆっくり読むとしよう。2013/06/01