出版社内容情報
軍に利用され、民衆の“熱狂”を作り出したメディア、戦争回避を検討しつつ避けられなかったリーダーたちの迷走を徹底検証!
満州事変以降、現地情報を報じ、大きく部数を伸ばした新聞。軍や政治家が戦意高揚のために利用したラジオ。戦後、軍関係者が告白した膨大な証言テープから明らかになった、東条英機ら首脳部間の驚くべきやりとり――。民衆の“熱狂”を作り出したメディアの責任、アメリカとの圧倒的な国力の差を認識しながら開戦を決断したリーダーたちの迷走。歴史年表には現れない“細部”を検証!
内容説明
満州事変以降、現地情報を報じ、大きく部数を伸ばした新聞。軍や政治家が戦意高揚のために利用したラジオ。戦後、軍関係者が告白した膨大な証言テープから明らかになった、東条英機ら首脳部間の驚くべきやりとり―。民衆の“熱狂”を作り出したメディアの責任、アメリカとの圧倒的な国力の差を認識しながら開戦を決断したリーダーたちの迷走。歴史年表には現れない“細部”を検証!
目次
第1章 メディアと民衆―“世論”と“国益”のための報道(“熱狂”はこうして作られた;世論とメディアによる戦意高揚;横並び報道と被害者意識;ラジオが導いた戦争への道のり)
第2章 指導者―“非決定”が導いた戦争(開戦・リーダーたちの迷走;“非決定”という恐るべき「制度」;アメリカの誤算;一九四一年、開戦までのアメリカ)
日米開戦史を再考する
対談 太平洋戦争開戦前の「日本と日本人」
1 ~ 1件/全1件
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
400
第2部はメディア篇と指導者篇。ここでも、従来抱かれていたステレオタイプのイメージ、すなわちメディアは軍部による検閲と統制とによって戦争の真実の姿を伝えることごできなかった、ということの嘘を暴いて行く。満州事変以来、戦線が拡大するごとに新聞は発行部数を飛躍的に増やし、軍部と共に、時には軍部をも凌駕する勢いで戦争への突入を煽っていった。ニュー・メディアたるNHKのラジオはさらに効果を上げたようだ。そして、そのことを日本のメディアは反省してこなかったのである。後半の指導者篇は、それに輪をかけた酷さである。⇒2021/04/20
yumiko
63
第一弾を読んだ時の憤りがそのままこちらに向かう。民衆を煽り誘導するメディアと、高揚感をもたらす報道を熱狂的に迎え入れる民衆。政府も軍も意識せざるをえない世論の誕生が、戦争へと向かった一つの要因でもあった。誰かに責任を負わせるのは簡単なことだけれど、国民はただ被害者なのではなかった。満州事変に慎重論を唱えた新聞への不買運動や、ナチスの宣伝方法を手本にしていたラジオなどは初めて知った事実。指導者達の迷走ぶりにはもはや唖然とするばかり。ここまで決断できない人々を集めるのも逆に難しいのではとさえ思えるほど。2015/08/22
バイクやろうpart2
59
終戦記念日の数日前に吉村昭さん作品『大本営が震えた日』を読み終え、もう一歩、戦争とは⁇を知りたく、読んでみました。300万人を超える死者を出した戦争に何故向かったのか?には責任回避、自己防衛的な思想が蔓延していたように思います。目の前に飛び込む活字をつい信じ、いつの間にか、すり込まれている自分を情けなく思う一方で、正解は無いまでも、時代を振り返る機会を得て良かったと思います。2018/08/18
ころりんぱ
57
すごかった。第2巻はメディアと民衆、メディアが売れる新聞を作り煽る、煽られた民衆が世論を作る、世論が軍部や政府をがんじがらめにする、皆が自分の都合のいい方向に空気の流れを作っていってしまう感じ、文章で説明されるとなるほどと思う。アメリカとの戦争は避けたかった人がたくさんいたのに、民衆からの非難浴び自らの評価を貶めてまで、戦争をやめる、軍を引く!と言える人が誰もいなかった。国際連盟を脱退した松岡洋右を旗振り万歳で迎え、真珠湾攻撃の日に民衆は湧いたという。何てことだ。学校では習えない勉強ができた。2015/09/12
へくとぱすかる
47
本来の下巻であるが、メディアについて書かれているので、こちらを先に手にした。日本を戦争にかりたてるように煽っていたのが、新聞やラジオなどのメディアであったという重要な指摘がなされ、そこに至るまでには、メディアとしての成立と発展の歴史がからんでいるので、詳細は本文にゆずるしかないが、マスメディアの影響力は絶大なものである。対する政治家や軍隊など、いわば国をあずかっていた責任者側の、意思決定のシステムに欠陥があり、結局は何も決めることができないまま、事態がどんどん進行していってしまったことには驚くしかない。2015/07/20