内容説明
結婚式より葬式が好きだ。葬式には未来なくて過去しかないから気楽である―。毎日の生活のなかで、ふと思いを馳せる父と母、恋の味わい、詩と作者の関係、そして老いの面白味。悲しみも苦しみもあっていいから、歓びを失わずに死ぬまで生きたい。日常に湧きいづる歓びを愛でながら、絶えず人間という矛盾に満ちた存在に目をこらす、詩人の暮らし方、ユーモラスな名エッセイ。
目次
私(ポポー;ゆとり;恋は大袈裟;聞きなれた歌 ほか)
ことばめぐり(空;星;朝;花 ほか)
ある日(一九九九年二月~二〇〇一年一月)
著者等紹介
谷川俊太郎[タニカワシュンタロウ]
1931(昭和6)年東京生れ。’52年「文學界」に詩を発表して注目を集め、処女詩集『二十億光年の孤独』を刊行、みずみずしい感性が高い評価を得る。以降、現在まで数多くの詩集、エッセイ集、絵本、童話、翻訳書があり、脚本、作詞、写真集、ビデオなども多数手がける。その詩は海外でも広く支持されている。読売文学賞を受賞した詩集『日々の地図』をはじめ、著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やすらぎ
216
自分とは毎朝、鏡の中で否応なしに向かい合う。昔の顔と今の顔どっちがいいのかな、やれやれこれが俺かと思うだけである。…老いるにつれて心が体を支配するよりも、体が心を支配する度合いの方が大きいと思うようになる。体が自然に必要にして充分なものを求め余分なものを受けつけなくなる。食べ物飲み物もそうだし読む本もそう。増やすよりも削る方がいい、余るよりも足りない方がいいと体が教えてくれて、心もそれに従うようになる。…財産を失うことを恐れる大金持ちになるくらいなら、何ひとつ所有せず道ばたに生きる。その方がゆとりがある。2021/02/27
kaizen@名古屋de朝活読書会
177
新聞雑誌に掲載した随筆集+ある日:日記+ことばめぐり:空、星、朝、花、生、父、母、人、嘘、私、愛。あとがきによると、ほんとうに一人暮らしをしていた時に書いていたものを集めたのでこの標題らしい。テレビを見るんだということが分かった。2013/07/20
風眠
140
「ひとりで在るということ」について、考えてみたくなるエッセイ集。大好きな詩人の日常のことや、頭の中にあることなどを知ることができた。シンプルに、時々辛辣に綴られている文章は、まるでリズムの良い音楽のようで、スカッとしている。結婚式よりも葬式のほうが好きだという考え方は、私にはまだ分かんないけど、年を重ねていったらきっと、「分かる、分かる!」ってなるのかな・・・? 時間をおいて、もう一度読んでみたい。 2012/09/28
じいじ
120
初読みの詩人・谷川俊太郎のエッセイは、文章の美しさとともに、そのユーモアのある内容が面白かった。人生での「ゆとり」の話は深い。「恋は大袈裟なものだが、誰もそれを笑うことはできない」という恋の哲学はユニークだ。結婚式より葬式に出る方が好きだと言う。祝辞に比べれば葬式の弔辞の方が退屈しないから…というのは、説得力がある。「私の死生観」は面白い話で腑に落ちた。「老いと死を恐れてはならない…」の著者の言葉を糧に、これからの毎日を大切にしていきたい、と読後に思った。2017/09/07
青蓮
115
谷川俊太郎さんの人柄を思わせる、ほんわかした文体のエッセイ。この方は穏やかな日常の中にあるささやかな幸福や歓びを見つけるのが上手な人だなぁと言う印象があります。その着眼点があるから、慈愛に満ちた素晴らしい詩が書けるのかなと思いました。「読書ばかりでは頭でっかちになる」との言葉にちょっとギクリ。「自分にとって本当に切実なことは、言葉では言えないのだということにも気づく。言葉にしないのではなく、言葉にならない秘密が私を生かしている。」谷川俊太郎さんの作品にもっと触れたい。2017/01/17
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