内容説明
“歌聖”柿本人麻呂―。宮廷権力と密接な関係にあった歌人が高らかに謡いあげたのは無邪気な叙景歌にすぎなかったのか?わが国最古の歌集『万葉集』の成立にメスを入れた時、初めて見えてきた〈もうひとつの風景〉。韓国語・漢語を媒介にして古歌を読み解くことで「ますらをぶり」の歌風は大胆な変貌を遂げた。人麻呂の生涯を辿りつつ、しなやかな日本語研究への道を拓く問題の書。
目次
開かれた古墳・万葉集
枕詞が解けた
多言語を操る歌詠み
人麻呂は告発する
死のジグソーパズル
人麻呂の遺書
アガサからの手紙
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
takaC
28
これはこれでそれなりに面白い試みだと自分は思った。2012/12/20
たまきら
10
高校時代に夢中になって読んだ本だったなあ。今読むとすごく主観的で、興奮して突っ走って書いてる感があるけれど、目の付け所はすごく面白いし、梅原さんの「水底の歌」と合わせて読むと本当に面白い。「ナラ」が韓国語で「国」だと知った時、日本の歴史のひもが一つほどけた感があったっけ。2015/07/17
きーよ
5
最初の歌から藤原定家の歌まで400年(関ヶ原から昭和までに相当)にもわたる4500首の漢字表記歌集が万葉集。後世「やまとことば」で再編纂され物を基に歌の解釈をし、意味不明の歌が散見される。作者は原点の漢字表記に拘り、時代背景から、古代三国(中国、韓国、日本)に跨がるユニバーサルな漢字世界があって、人麻呂は官吏であり歴史上の事件に無関係でなく、漢字の持つ表意や音を自在に操り(怨嗟の)心象を書き表したが、次世代権威は全く違う物に読みかえていたとは!学術的にも素晴らしい謎解きミステリーは初めて。目から鱗。2018/04/26
あゆ
5
高校生のとき月例読書でよみました。ほんとに、おもしろかった。読み込みました。すばらしい。
コノヒト
3
千年前の柿本人麻呂を今読み解こうとすることは、千年後に日本人が宇多田ヒカルや桑田佳祐の英語交じりの歌詞を読み解こうとするのと等しい。と考えれば、万葉集の歌が日本語朝鮮半島語中国語交じりの歌であってもおかしくないのか、と思った。2018/05/14