内容説明
死んでしまった猫〈雲〉を愛惜する夢想的で自閉的な中年女性〈私〉、「猫の殺人」という童話を書く年老いた女流詩人G、そして優しくも威厳に満ちた猫たち―。悪意に満ちた外界に傷つけられる繊細な存在の交感を詩的散文に結晶させた、優雅で奇妙な連作小説集。表題作で芥川賞を受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
163
最後の表題作までたどり着くのにやや根気がいる。同じ話を繰り返し読まされているような…。小説というよりは詩ではないのか。幻想的で人と猫が入れ替わったかのような進行で、これは人のセリフなのか猫のセリフなのか?この人物は実は猫?などと空想しながら読んでみると楽しくなってくる。それにしても猫の描写が細かく、じゃれついてきたり、寝そべってみたり、人の顔を見上げてみせたり情景が鮮明に浮かんでくる。2021/08/09
空猫
32
【第85回芥川賞】著者のエッセイの様に日常が淡々と語られる短編集。初老と老婦人の生活なので起伏がなく、小説や詩が挟まっていなかったらひどく退屈だったろう。その日常のはずがどこかイビツで夢うつつで今と昔が錯綜していて一筋縄ではいかない物語になっていた。もっと短い話にしたほうが分かりやすかったのかも。2023/09/23
JUN
20
最初は少し取っ付きにくい感じであったけど、最後の表題作でもある「小さな貴婦人」は、それまでの作品をなぞりながらの集大成の様で好き。2015/06/09
大粒まろん
15
サティを聴いてるような感じだった。読んでる途中でウトウトしてしまった笑。読み終えてもまだサティが流れていた。どこから読んでも吉行理恵氏の詩が聞こえる作品。2023/06/25
大阪のきんちゃん2
11
第85回芥川賞受賞作を含む短編集。1981年刊の単行本で読みましたが見当たらないのでここで登録。 読むきっかけは、NHK-BSで朝ドラ「あぐり」の再放送。 表題作含み5作品収録なのですが、どうにもとっ散らかっていて…どれを読んでも猫とGと私が出てきます。 同じ話を5回読まされている気も? 母親が洋装店になってる、姉は舞台女優、実父は早世、義父…兄は出てこない。 詩人と小説家、Gと私と猫がごっちゃ… 天地真理や山口百恵の歌?淀川長治、ジャニスジョプリン、ジミヘン、そんな時代。ヘルペス痛そう、そんな話でした。2021/09/25