内容説明
ほんまに悲しいときは、男の子も、泣いてええんよ―。城山家の、男ばかり六人兄弟の五番目のハァちゃん。感受性が豊かなあまり、幼稚園の先生が辞めると聞いては泣き、童謡に出てくるどんぐりの行方を案じては泣いてしまう。家族に見守られ、友人たちと野山を駆け巡って、力強く成長してゆく過程を瑞々しく描く。心理学者・河合隼雄の遺作となった、せつなく温かな自伝的小説。
著者等紹介
河合隼雄[カワイハヤオ]
1928‐2007。兵庫県生れ。京大理学部卒。京大教授。日本におけるユング派心理学の第一人者であり、臨床心理学者。文化功労者。文化庁長官を務める。独自の視点から日本の文化や社会、日本人の精神構造を考査し続け、物語世界にも造詣が深かった。著書は『昔話と日本人の心』(大佛次郎賞)『明恵 夢を生きる』(新潮学芸賞)など多数
岡田知子[オカダトモコ]
1965(昭和40)年富山県生れ。広告制作会社にグラフィックデザイナーとして勤務後、イラストレーターとして独立。透明水彩や鉛筆を用いて、主に出版・広告の分野で活動中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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うりぼう
84
河合先生の遺作。最期には、子どもの時代に還るのだろうか。岡田知子さんの絵が、あの時代にマッチして、心温まる。男ばかりの6人兄弟。子どもから思春期への不安と焦燥、異性への関心、大人になるイニシエーションがここにある。ハイカラなお父さんは、家庭で合唱やサンタごっこ、遠くから見守る母、それとなく気遣う兄弟、祖父母はいないが、豊かな家庭がある。泣くことは自分とともに周囲をも浄化する。幼少時に母とともに死と再生を経験したハァちゃんは、大人の涙を流す。自伝だからこそ、フィクションなのか。カモメの水兵さんとともに合掌。2010/06/24
naoっぴ
78
故河合隼雄先生の子供時代をもとに書かれた小説。可愛らしい挿絵入り、心暖まる子供たちのエピソードを描いた内容は絵本のようでほっこりと癒されました。ハァちゃんが小学四年生の時に精神的に不安定になったところを読んではっと思い出しましたが、私の息子もその年、同じように心が不安定でいろいろと大変な時期でした。きっとその年はひとつ大人になる年齢なのですね!執筆途中で倒れられたとのことで物語はハァちゃんが四年生の時点で終わっていますが、最後まで書かれたらきっと素敵な子育て本になっただろうなぁと感じます…。2016/11/15
ネギっ子gen
63
先生が連載途上で逝ってしまわれたので、置き土産となった自伝的小説。挿画の岡田知子さんによる、末尾を飾る画「ハァちゃん、どうもありがとう」は、読者の代弁です。このような見事な装画に彩られた一書。「絵・岡田知子」としっかり明記して、共著の形にしているところに、編者の見識の高さが窺われる。お母さんの「ハァちゃん、ほんまに悲しいときは、男の子も、泣いてええんよ」の台詞。どんぐりの行方を案じて泣くハァちゃんに、「物語」での解釈を教える長兄など家族環境の素晴らしを思い、先生のカウンセリングの原点を感じた。心温まる本。2019/12/23
はらぺこ
52
幼稚園の頃から小4までの自伝的小説。 泣き虫いうてもナンデモカンデモ泣く泣き虫やなくて優しい泣き虫。 ヤンチャな兄達は泣き虫のハァちゃんをからかう時もあるけど基本的に家族は全員優しい。 挿絵も内容にマッチしてて良かった。2012/03/28
BlueBerry
36
優しくて雰囲気が良い作品でした。大事な事を教わったような気がします。割とお勧めです。2013/10/25