内容説明
冷厳なはずの数学者が、涙もろくて自他共に認める猪突猛進?!妻、育ち盛りの息子三人と暮す著者。健全な価値観を家庭内に醸成するためには、父親の大局的認識と母親の現実的発想との激論はぜひ必要と考えるのに、正直、三人の部下を従えた女房の権勢は強まるばかり。…渾身の傑作「苦い勝利」、文庫初収録の15編など、父、夫、そして数学者としての奮戦模様を描いて、本領全開の随筆66編。
目次
父親としての威厳
数学の試験
酒の模範生
第一感
一昔前の歌謡曲
居眠り
年寄りの情緒力
テニス
ふるさとのお盆
訴訟を恐れる社会
自由の憂鬱
理科ぎらい
家族で見送った父の海外旅行
父の負けず嫌い〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ふじさん
87
数学を生業としていた自分にとっては、初めて手にした時のことが、昨日のように思い出される。このエッセイ集を初めて読んだのは、1冊目「若き数学者のアメリカ」で30代前半、早いものでそれから40年振りの再読。読む年代は、変われど面白さは変わらず。父親は作家の新田次郎、母親は藤原てい、書く文章が面白くないはずはない。彼独特の人生観や父親、母親、妻の個性が巧みなタッチで描かれており、面白かったし、「苦い勝利」には、読んでいて胸が熱くなった。ユーモアたっぷりに描かれたエピソードが心をくすぐる、古さを感じない1冊だ。2025/06/09
るっぴ
26
藤原正彦作品、初読み。父親のちょっとした意地が面白かった。サクッと読了。2017/06/03
ちょん
17
大好きな藤原先生の本。今回も笑いの中で色々教えていただきました。2016/06/05
だいすけ
13
幼年期をつぶすこと、青春期をつぶすことの報酬が、意外に小さいことを強調すべきと思う。幼年期と青春期を自然な姿で送ることが深い情緒を育み総合的判断力を培い、人間的スケールを大きく育てるという点で、決定的に重要であり、ひいては出世や幸福にもつながることを説くべきと思う。たとえ外国語が堪能でも、郷土や祖国への誇りや愛情を抱くことがなければ、国籍不明人にはなれても国際人にはなれない。日常的に伝統に囚われていることが、反動として斬新への爆発力を産んでいまいか。この著者の文章は洒脱かつとても端正。2019/06/07
Kaz
13
検便論争。藤原先生の侍ぶりが堂に入っていて見事。私も、若いころから「頑固親父」を目指しているのですが、藤原先生のようにはなかなか振舞えません。周囲との軋轢をものともせず、正しいことには一徹に行動する。妻一人娘二人。男女の思考回路の壁は大きく、家庭内だけでも孤立無援の状態でついつい自論を取り下げてしまう私には、藤原先生はあこがれの的です。2012/12/18




