内容説明
天保年間の江戸の町に、極めつきのワルだが、憎めぬ連中がいた。博打好きの御家人・片岡直次郎、辻斬りで財布を奪う金子市之丞、抜け荷の常習犯・森田屋清蔵、元料理人の悪党・丑松、ゆすりの大名人として知られた河内山宗俊、そして吉原の花魁・三千歳。ひょんなきっかけで知り合った彼らが、大胆にも挑んだ悪事とは…。世話講談「天保六花撰」に材を得た痛快無比の連作長編。
著者等紹介
藤沢周平[フジサワシュウヘイ]
1927‐1997。山形県生れ。山形師範卒業後、結核を発病。上京して五年間の闘病生活をおくる。’71(昭和46)年、「溟い海」でオール読物新人賞を、’73年、「暗殺の年輪」で直木賞を受賞。時代小説作家として、武家もの、市井ものから、歴史小説、伝記小説まで幅広く活躍
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感想・レビュー
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じいじ
89
これは藤沢小説では、異色の江戸の「悪党」を主人公にした物語です。と言っても、どいつも何故か憎めずで、親しみさえ感じてしまう悪人どもの連作6篇は面白かった。藤沢小説の新境地を見つけ出した気分です。並みいる男たちの中での紅一点、小股の切れ上がった𠮷原花魁・三千歳が、とても艶っぽい好い味を見せてくれます。『蝉しぐれ』『三屋清左衛門残日録』などの名作は言うに及ばずですが、悪党たちの悪さをユーモアたっぷりに描いた、こちらの傑作も藤沢周作の魅力なのだと思います。2021/09/25
shincha
58
悪党が主人公の連作短編集。花魁に会う金を作るために辻斬りをする道場主や、困窮しているある藩に御禁制の抜荷を持ちかけ、それを幕府に密告し、三千両の大枚を奪ったうえ、陥れた者…それぞれ凶状持ちであるが…何故だか憎めない。最後の章では水戸藩を恐喝するが……面白かった!2024/03/06
キムチ
56
薄い一冊ながら確実に江戸の空気を満喫させてくれる佳作。辻裏の風景、夕闇迫って歩く何とも言い難い物騒さ、キラッと光る白刃・・やはりいつもながらいい味。悪党、といっても小悪党。しかも佐高氏の解説語るごとく人間味=悪、男の味っていうやつ。この解説もなかなか味があり司馬VS藤沢の異なりを男と女の性差から述べる。天保って中野碩翁、お美代の方なんかが登場する爛熟のしょっぱな。巨悪のもとに小物がちょろちょろして縁の下をかじった時代。なかなか・・ネタが尽きないような・・花魁三千歳のちゃっちいあだ花が興趣を醸す。2017/08/15
かんらんしゃ🎡
54
名前だけは聞いたことのある河内山宗俊。将軍家に仕える茶坊主でありながらゆすりたかりの悪党だ。その河内山の家に出入りする御家人、道場主、大店の主人。それに絡む花魁。それぞれの章でそれぞれの悪事エピソードは痛快で、浅田次郎の『天切りの松』に似た構成だ。次郎作品が芝居がかってきらびやかなのに対してこちらは大仰さはなくさらりとした文体。どちらもいい。悪人たちは色気も魅力もあるが悪党は悪党、幸せは掴めない。2020/01/14
モトラッド
37
[再読]★★★☆ 悪の世界に光を当てたユニークな連作長篇時代小説。藤沢先生の引き出しの多さに脱帽です。結構癖になりそうな世界観です。三読もあるかも。2019/10/13
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